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北鹿川柳

川柳でユーモアのある街づくり
「川柳わらべの会」の協力を得て、平成7年にスタートした北鹿新聞社主催事業。管内5カ所に投句箱を設置し、広く読者の作品を募集しており、寄せられた作品の一部を毎月15日付の紙面で紹介しています。その中で月間賞に輝いた秀句を掲載します。

2024年11月

NEW
気の強さ逃げる苦労を買う癖が     梅村 房子
 【評】必死な姿が浮かぶ、前向きな姿に共感。
子へ帰る祖母をなだめる子守唄     三浦 紀子
 【評】すがすがしい一句。温かさが伝わって来る。
物価高(ダカ)戦う相手マイ財布    濱田 武光
 【評】現況をズバリ切ってます。一億総決起の時が再来したのかと思わせる一句。早めの鎮静剤を。
逃げ場所の椅子を温め迎え入れ     清水てい子
 【評】迷いが生じた時、人は必ず安らぎの空間を求めます。静かに出してくれた温かい椅子がすべてを悟ります。ホッとする一句。
土壇場で逃げがちらつく風見鶏     澤田  亮
 【評】せっぱつまって、進退きわまる場面では、逃げた方が楽。人間風見鶏は戴けないが、屋根の上の風見鶏は立派です。
我が家には指示役居らず皆フリー    千葉 恭子
 【評】軽佻浮薄の世の中。指示役も実行犯も二十歳です。家の中ではフリーでも、時には指示役も要ります。

2024年10月

少年の脱皮戸惑う家族達        児玉ユキヱ
 【評】「少年の脱皮」思い切った表現にするどさを感じる。
都会より娘案じて米届く        新号 光子
 【評】米不足と云われた昨今、都会から温かさが伝わって来る。娘さんに感謝ですね。
涙するそっと出された癒しの茶     清水てい子
 【評】涙する場面に、ことばなくそっと置かれた温かいお茶。身も心もほぐれる一瞬。手を合わせたくなる心境を写す一句。
眉を引く今日のこころを整える     片岡登代子
 【評】眉をキリリと引くことでこれを最後の〆(シメ)とする。今日への出陣の場面ですね。良き日でありますように。
笑顔でも心の中は乱気流        三浦 紀子
 【評】屈託のない笑顔でも、心の中ははかれません。乱気流としたのは見事、百八十度の比較対照ができました。
畑にはベジタリアンの虫だらけ     加福みよこ
 【評】家で待っているベジタリアンの前に、畑のベジタリアン(主として幼虫)がサクサクと穴をあけ食べています。ユーモアは川柳の真髄です。

2024年9月

妻の怪我あわてる夫のニューエプロン   三上タツ子
 【評】新鮮な御主人のエプロンスタイル…、日常の円満さがそのまま十七文字に表現されました。喝采‼
建前と上着を脱いで入る宅        須藤 良子
 【評】テンポよく表現されているところがよい。主婦の心情が面白い。
抜けた髪もったいないと付けてみる    嘉成セツ子
 【評】笑うに笑えない句。必死な姿がうかぶ。実感がこもっている。
人の和を繋いでいます軽い嘘       伴  朝子
 【評】ほんの一つまみの調味量が料理の味を大きく変える場合もあります。嘘をすべて悪いと表現せず、エッセンスとして上手に使う技術も持ちたいですね。
信用を暖簾(のれん)に染めている老舗(しにせ) 岩谷 隆史
 【評】秘伝のタレと同じく、むやみに暖簾は変えない。信用が染み込んでいます。暖簾を見て味わってから入店しましょう。いぶし銀の句。
米消える一億人の目眩(くら)まし    清水てい子
 【評】米余りを言っておいて無くなったとは。一億人の目をあざむいての農水省に、風刺を通り越して反骨の句です!

2024年8月

孫発った朝はひんやり椅子淋し     片岡登代子
 【評】家族愛の味わい深い作。「椅子淋し」はまさに実感句。
今日の味決まらず愛をひとつまみ    畠沢ヤエ子
 【評】「愛をひとつまみ」すばらしい表現。どんな料理になったのか食べてみたい。
水やりはオシマイ君はもう飛べる    三浦 紀子
 【評】テンポの良さ。斬新な着想に引かれる。
愚かでも親にもらった体です      吉原 キヨ
 【評】課題の「愚か」と「体」を当てはめたような句です。じ~んと来ますね。親の子として生きましょう。
有頂天欠けていましたデリカシー    児玉ユキヱ
 【評】喜び舞い上がって、周囲が見えなくなる愚かさ。でも日本人は繊細。五輪でもいくつか見えましたよね。
爺爺(ジイジイ)を孫と蝉とが取り合いす  高谷 勝子
 【評】夏に鳴き始めた蝉の声で、孫だけでなくジイジイとうるさい。「お爺さん」が聞きたい。

2024年7月

ほほ染めてつないだその手今は杖     珠井 妙安
 【評】つなぐ手は同じでも昔と今では違う。歳はとりたくないが相手がいることはうれしいですね。
ご希望に添いかねますという鏡      三浦 紀子
 【評】鏡は正直です。ご希望通りには参りません。鏡の気持ちわかります。
陽(ひ)を抱いた布団に眠るこの至福   児玉ユキヱ
 【評】「陽(ひ)を抱いた…」の表現がすべて。紫外線をたっぷり浴びふっかふか。熱で繊維が焦げた匂(におい)もして。熟睡ですよ、もう。
女より女らしくと女形          伊東 誠子
 【評】女より美しいのは「女形」、誰からどのように「女」を身につけるのか。玉三郎にゾクッとさせられた人も多いでしょう。「女」を三度使って見事なリズム。
開けてます暮らしの中の言葉窓      芳賀 ヒサ
 【評】上手に心の言葉窓を開けておきましょう。閉じる、開けるの機会は慎重に。時には陽(ひ)を入れる事も忘れずに。前向きな日常を感ずる一句。
骨を折り風呂も着替えも妻頼み      古川 哲生
 【評】日常特に感じていなかった生活不安が現実になった時は、援助を求めましょう。頼む立場になると心は柔ぎます。人生色々、体験もプラス方向に。
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