喫煙の危険性と禁煙治療について
やしろ内科クリニック
院長 八代 均
1.喫煙と糖尿病
喫煙は糖尿病の発症および糖尿病合併症に関係があることが指摘されている。喫煙者は非喫煙者に比較して1・4倍糖尿病になりやすく、喫煙によりインスリン抵抗性(効きが悪い)を引き起こすことが原因と考えられている。また、喫煙により糖尿病合併症である、腎症および動脈硬化を促進させる。
喫煙は糖尿病の発症および糖尿病合併症に関係があることが指摘されている。喫煙者は非喫煙者に比較して1・4倍糖尿病になりやすく、喫煙によりインスリン抵抗性(効きが悪い)を引き起こすことが原因と考えられている。また、喫煙により糖尿病合併症である、腎症および動脈硬化を促進させる。
2.喫煙に関係する疾患
肺癌および咽頭・喉頭癌をはじめとして各種癌、脳卒中、胃・十二指腸潰瘍、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、慢性気管支炎・肺気腫のCOPD(閉塞性肺疾患)、骨粗鬆症、妊娠に係わることなどのリスクが高まる。特に癌については、喉頭癌の96%、肺癌の72%、食道癌の48%が喫煙にあるとされている。
3.喫煙と肺癌
喫煙は肺癌の原因となり、男女で非喫煙者を1とすると過去に喫煙していると2・4~2・6倍、現在喫煙していると3・9~4・8倍の危険度となる。
4.受動喫煙の危険性
他人が吸ったたばこの煙を吸わされることを受動喫煙あるいは間接喫煙という。受動喫煙でも図のようにリスクが高まる。受動喫煙による肺癌の危険性が1・21~1・93倍である。たばこを吸って肺へ入る煙を主流煙、灰皿にたばこをおいたときに出る煙が副流煙である。副流煙が主流煙よりも有害物質の濃度が2・8~52・0倍の高さである。喫煙は本人だけでなく周囲にいる人にも危険性を及ぼすことになる。
5.禁煙することによるメリット
禁煙すると肺癌による死亡率が減少し20年で非喫煙者と同じになる。また禁煙により以下の多くのメリットがある。健康になり病気にかかるリスクが減る、お金の節約になる、老化防止になる(アンチエイジング)、肌のツヤが良くなる、血液がサラサラになる、口臭がなくなる(タバコ臭くなくなる)、朝気持ちよく起きられる、運動しても息切れしなくなる、タバコが吸えない我慢やイライラをしなくなる、ごはんや食事がおいしく食べられるようになる、歯が黄色く汚れなくなる、部屋やインテリア、車内などがヤニで汚れなくなる、喫煙所を探し回らずに済む、タバコを吸うのに肩身の狭い思いをしなくて済む、衣服や髪の毛などにタバコの臭いがつかなくなる、周りの人に迷惑をかけずに済むなど。しかし、禁煙すると食事が美味しくなり、食事量が増えることから体重増加となり、糖尿病が悪化することがあるから、糖尿病の患者は食事に注意が必要である。
6.たばこ(ニコチン)の離脱症状と対処法
禁煙してから1~3日位で血中ニコチン濃度が下がってくることにより離脱症状が出現する。離脱症状に、たばこを吸いたい、頭痛、集中力低下、いらいら感、不眠、傾眠、便秘などがある。対処法として何かを行い気を紛らすことで、例えば、水を飲む、歯を磨く、顔を洗う、盆栽をいじる、洗濯をする、掃除をする、計算をする、シャワーを浴びる、散歩をするなど。
7.禁煙治療
喫煙者はニコチン中毒にある。禁煙はニコチン中毒から離脱することである。現在禁煙治療を保険診療で行うことが可能である。治療薬にニコレット、ニコチネルTTSとチャンピックスがある。ニコレットにはガムタイプとパッチタイプがあり、処方箋がなくとも薬局で購入できる。ニコチネルTTSはパッチタイプである。ニコレットとニコチネルTTSは体内のニコチン濃度を上げることにより喫煙したい気持ちを抑え、喫煙しなくてもよいようになることである。ニコチネルTTSはTTS30、TTS20とTTS10があり、それぞれニコチン濃度が順に少なくなっている。ニコチネルTTS30は1枚にたばこ1箱分のニコチンが含まれている。ニコチン濃度が高いTTS30から開始し1日1枚を貼付し4週間続ける、次にニコチン濃度が中のTTS20を2週間続け、ニコチン濃度が低いTTS10を2週間続けて貼付する。ニコチン濃度を徐々に下げることによりニコチン中毒から離脱することである。ニコチネルTTSによる保険診療は8週間である。TTS20とTTS10は処方箋がなくとも薬局で購入できる。チャンピックスは飲むタイプの禁煙治療薬である。喫煙するとニコチンが体内に入り脳内の神経細胞のニコチン受容体へ結合しホルモンが分泌され喫煙に伴う気分爽快感となる。飲む禁煙治療薬チャンピックスは、ニコチン受容体にチャンピックスが結合することにより、喫煙してもニコチンがニコチン受容体に結合できなくなることから喫煙後の爽快感を味わえなくなり、たばこが美味しいと感じなくなる。つまりチャンピックスはたばこが嫌いになる薬剤である。チャンピックスによる保険診療は12週間までである。
8.禁煙保険治療の進め方
1)喫煙状況の問診、禁煙の準備性に関する問診、ニコチン依存のスクリーニングテスト(TDS)、喫煙に伴う症状や身体所見の問診および診察を行う。呼気中の一酸化炭素(CO)濃度を測定する。呼気中の一酸化炭素の濃度で表の通り喫煙レベルを推測する。
2)①直ちに禁煙しようと考えている、②TDSで10項目中5項目以上、③ブリンクマン指数(喫煙年数×1日の本数)が200以上、④禁煙治療に同意している、などの4項目を満たすと保険診療が可能となり禁煙治療プログラムを開始する。
3)パッチ製剤(ニコチネルTTS)あるいは飲む禁煙治療薬(チャンピックス)にするか選択をする。4)再診は初診後2、4、8および12週後に受診する。ただしニコチネルTTSは8週までである。受診時に呼気中の一酸化炭素を測定し禁煙状況について評価をする。
9.禁煙治療の成功率
受診回数が多いほど成功率が高いことが報告されている。チャンピックスによる禁煙治療で12週間継続すると成功率が約50%である。すなわち禁煙が成功するのは2人に1人である。時間がたつとさらに成功率が減ることになる。
10.なぜ禁煙が難しいのか?
主な原因は、第1にたばこの依存度が高く、ニコチンが麻薬のコカインあるいはヒロインよりも依存度が高いことにある。第2に喫煙者の脳が喜びに対する反応が鈍くなっていることである。たとえば家族で食事をした時に、非喫煙者は食後に美味しかったと思うが、喫煙者は食後に美味しかったと思えなく、そのときに喫煙するとようやく美味しかったと思うようになる。第3に禁煙に対するモチベーション(動機)が低いことにある。
肺癌および咽頭・喉頭癌をはじめとして各種癌、脳卒中、胃・十二指腸潰瘍、心筋梗塞、閉塞性動脈硬化症、慢性気管支炎・肺気腫のCOPD(閉塞性肺疾患)、骨粗鬆症、妊娠に係わることなどのリスクが高まる。特に癌については、喉頭癌の96%、肺癌の72%、食道癌の48%が喫煙にあるとされている。
3.喫煙と肺癌
喫煙は肺癌の原因となり、男女で非喫煙者を1とすると過去に喫煙していると2・4~2・6倍、現在喫煙していると3・9~4・8倍の危険度となる。
4.受動喫煙の危険性
他人が吸ったたばこの煙を吸わされることを受動喫煙あるいは間接喫煙という。受動喫煙でも図のようにリスクが高まる。受動喫煙による肺癌の危険性が1・21~1・93倍である。たばこを吸って肺へ入る煙を主流煙、灰皿にたばこをおいたときに出る煙が副流煙である。副流煙が主流煙よりも有害物質の濃度が2・8~52・0倍の高さである。喫煙は本人だけでなく周囲にいる人にも危険性を及ぼすことになる。
5.禁煙することによるメリット
禁煙すると肺癌による死亡率が減少し20年で非喫煙者と同じになる。また禁煙により以下の多くのメリットがある。健康になり病気にかかるリスクが減る、お金の節約になる、老化防止になる(アンチエイジング)、肌のツヤが良くなる、血液がサラサラになる、口臭がなくなる(タバコ臭くなくなる)、朝気持ちよく起きられる、運動しても息切れしなくなる、タバコが吸えない我慢やイライラをしなくなる、ごはんや食事がおいしく食べられるようになる、歯が黄色く汚れなくなる、部屋やインテリア、車内などがヤニで汚れなくなる、喫煙所を探し回らずに済む、タバコを吸うのに肩身の狭い思いをしなくて済む、衣服や髪の毛などにタバコの臭いがつかなくなる、周りの人に迷惑をかけずに済むなど。しかし、禁煙すると食事が美味しくなり、食事量が増えることから体重増加となり、糖尿病が悪化することがあるから、糖尿病の患者は食事に注意が必要である。
6.たばこ(ニコチン)の離脱症状と対処法
禁煙してから1~3日位で血中ニコチン濃度が下がってくることにより離脱症状が出現する。離脱症状に、たばこを吸いたい、頭痛、集中力低下、いらいら感、不眠、傾眠、便秘などがある。対処法として何かを行い気を紛らすことで、例えば、水を飲む、歯を磨く、顔を洗う、盆栽をいじる、洗濯をする、掃除をする、計算をする、シャワーを浴びる、散歩をするなど。
7.禁煙治療
喫煙者はニコチン中毒にある。禁煙はニコチン中毒から離脱することである。現在禁煙治療を保険診療で行うことが可能である。治療薬にニコレット、ニコチネルTTSとチャンピックスがある。ニコレットにはガムタイプとパッチタイプがあり、処方箋がなくとも薬局で購入できる。ニコチネルTTSはパッチタイプである。ニコレットとニコチネルTTSは体内のニコチン濃度を上げることにより喫煙したい気持ちを抑え、喫煙しなくてもよいようになることである。ニコチネルTTSはTTS30、TTS20とTTS10があり、それぞれニコチン濃度が順に少なくなっている。ニコチネルTTS30は1枚にたばこ1箱分のニコチンが含まれている。ニコチン濃度が高いTTS30から開始し1日1枚を貼付し4週間続ける、次にニコチン濃度が中のTTS20を2週間続け、ニコチン濃度が低いTTS10を2週間続けて貼付する。ニコチン濃度を徐々に下げることによりニコチン中毒から離脱することである。ニコチネルTTSによる保険診療は8週間である。TTS20とTTS10は処方箋がなくとも薬局で購入できる。チャンピックスは飲むタイプの禁煙治療薬である。喫煙するとニコチンが体内に入り脳内の神経細胞のニコチン受容体へ結合しホルモンが分泌され喫煙に伴う気分爽快感となる。飲む禁煙治療薬チャンピックスは、ニコチン受容体にチャンピックスが結合することにより、喫煙してもニコチンがニコチン受容体に結合できなくなることから喫煙後の爽快感を味わえなくなり、たばこが美味しいと感じなくなる。つまりチャンピックスはたばこが嫌いになる薬剤である。チャンピックスによる保険診療は12週間までである。
8.禁煙保険治療の進め方
1)喫煙状況の問診、禁煙の準備性に関する問診、ニコチン依存のスクリーニングテスト(TDS)、喫煙に伴う症状や身体所見の問診および診察を行う。呼気中の一酸化炭素(CO)濃度を測定する。呼気中の一酸化炭素の濃度で表の通り喫煙レベルを推測する。
2)①直ちに禁煙しようと考えている、②TDSで10項目中5項目以上、③ブリンクマン指数(喫煙年数×1日の本数)が200以上、④禁煙治療に同意している、などの4項目を満たすと保険診療が可能となり禁煙治療プログラムを開始する。
3)パッチ製剤(ニコチネルTTS)あるいは飲む禁煙治療薬(チャンピックス)にするか選択をする。4)再診は初診後2、4、8および12週後に受診する。ただしニコチネルTTSは8週までである。受診時に呼気中の一酸化炭素を測定し禁煙状況について評価をする。
9.禁煙治療の成功率
受診回数が多いほど成功率が高いことが報告されている。チャンピックスによる禁煙治療で12週間継続すると成功率が約50%である。すなわち禁煙が成功するのは2人に1人である。時間がたつとさらに成功率が減ることになる。
10.なぜ禁煙が難しいのか?
主な原因は、第1にたばこの依存度が高く、ニコチンが麻薬のコカインあるいはヒロインよりも依存度が高いことにある。第2に喫煙者の脳が喜びに対する反応が鈍くなっていることである。たとえば家族で食事をした時に、非喫煙者は食後に美味しかったと思うが、喫煙者は食後に美味しかったと思えなく、そのときに喫煙するとようやく美味しかったと思うようになる。第3に禁煙に対するモチベーション(動機)が低いことにある。
(大館市 平成29年7月28日掲載)