食物アレルギーと学校・保育園
北秋田市民病院
野口博生
東京調布市の小学5年生の子供さんが食物アレルギーに伴うアナフィラキシーショックで亡くなったのは一昨年の暮れのことです。家族の心痛と関係者の落胆を思うと心がつぶれる思いです。公開されている調布市の事故調査報告書を読んでみました。生後間もなくから喘息などで治療を受けていて、食物アレルギーも幼児期から発症していたことが書かれています。小学校でも5年間にわたって家族や学校、給食担当者が連絡や研修を行っていたのですが、事故が起こり、治療薬のエピペンも手元にあったのに子供を助けることができませんでした。
この事故を受けて食物アレルギーの「診断書を学校などに出すよう言われた」として受診する事も増えています。診断書は学校で対応を決める大切な資料です。診断には以前起こったアレルギーの症状の詳細、血液検査や食物負荷試験などが行われ1週間程度を要します。
発病の予防には家族と学校関係者との打ち合わせが必要です。今回の調査でも「もう少しこうしていれば防げたのでは」という細かい指摘があげられていました。今回の事故でも毎日のようにチェックはされていたのですが、偶然が悪く重なって起こらないはずの事が起こるのが事故です。予防だけでは済みません。発病した後、皮膚のかゆみで止まるのか、喘息やおう吐などのアナフィラキシーに進むのか、血圧低下とショックに至るのか、中等症以上の症状予測は難しいのが実状です。対応についてはガイドラインなどの資料も整備されています。発病した時の真剣なシミュレーションを何度か実施しておく事が求められています。
(北秋田市 平成26年3月28日掲載)