「今度に試合に出してもいいですか?」
秋田労災病院リハビリ兼整形外科
関展寿
皆さん初めまして。秋田労災病院でスポーツ外来を担当しているリハビリテーション科兼整形外科医の関です。毎週金曜日の午後にスポーツ選手の診察時間を設けています。よく聞かれるのが題名の「今度の試合に出してもいいですか?」です。いいも悪いも聞かれた私は困ります。何故なら私は警察でも裁判官でもないからです。疲労骨折を悪化させても野球肘で肘が曲がらなくなっても私が罰金を取ったり牢屋に入れたりすることはありません。
でも私は選手の味方なのでこう言います。「足を引きずって歩いているのにバスケットのリバウンドは取れませんよ」。じっと唇を噛む選手。しかし父親が反論します。「この子は中心選手だから出ないと勝てないんだよ」。母親も続きます。「出られないと父母の会で私の立場がないのよ」。選手は何も言いません。でも選手の顔に書いています。「痛いのは俺だ。父さんと母さんが痛い訳じゃない」。
今度は私が聞く番です。X線やMRIなどの検査結果から彼らの将来が予測できるのです。それに強制的に出場させられた選手は進学後に同じ種目を続けないことも多いのです。「今後のスポーツに支障を来してもいいですか?後遺症が残ってもいいですか?」
骨折や頭部外傷などのケースを除いて出場可否の判断は難しいものです(私の基準は甘いほうだと思いますが)。選手が絶対的エースなのか代わりがいるのか、お付き合いの招待試合なのか3年生の最後の大会なのか、など選手の立場や大会の重要度も加味して判断します。ただ、選手は自分で「出ません」と言えない場合が多く、ギブアップのタオルを投げてあげるのも私の役割だと考えています。
小学生・中学生は成長軟骨があり骨の障害を起こしやすい時期です。高校生になり甲子園・都大路・インターハイを目指すときに全力プレーできない選手も見てきました。去年の流行語は「今でしょ!」でしたが成長期の選手に対しては「今じゃないでしょ!」のことも。彼らの輝くときは未来に待っているはずです。
(大館市 平成26年4月18日掲載)