ロコモティブシンドローム
工藤整形外科医院 院長
工藤透
みなさんはもうロコモという言葉を覚えていただけたでしょうか?確認になりますがロコモとは、ロコモティブシンドロームすなわち運動器症候群の略で、運動器(骨、筋肉、関節およびこれらを支配する神経など)がうまく働かないことにより要介護、寝たきりになる危険性の高い状態のことを言います。ロコモの認知度は、全国的には2014年は36・1%(2013年26・6%、2012年17・3%)と上昇していますがまだ低い状態です。都道府県別では佐賀県67・4%、次いで秋田県51・1%、石川県50・0%という報告があります。大館市では平成22年3月にロコモの市民講座を行い、昨年には4回ほど本紙にロコモティブシンドロームについて掲載させていただきましたので多くの人がこの言葉を見たり聞いたりしているのではないでしょうか。最近では全国ストップ・ザ・ロコモ協議会(SLOC=エスロック)というNPO法人も設立され、毎年全国3カ所で市民公開講座を予定しロコモ対策の重要性を訴える動きが始まり、ロコモに対する関心が高くなってきています。
そこで今一度どうしてロコモが重要なのかについてお話ししたいと思います。高齢化社会が進み介護を要する人が増えてきていますが、その介護が必要になった原因の中で、要支援の約1/3(32・1%)、要介護の約1/6(16・7%)が運動器の疾患や骨折・転倒によるものです。運動器の疾患は早期から適切な対策をとれば要介護、寝たきりを予防できる可能性が高い分野なのです。この分野の要介護、寝たきりを減らすことが医療費抑制、非介護者および介護者の負担軽減をもたらします。要介護、寝たきりを予防するためには早期に運動器の衰え、病気に気づくことが大切なのです。しかし運動器の疾患は直接には生命にかかわりがないように思われるためあまり意識されておらず、また年のせいとして異常だと思わない人が多いために気づきにくいのです。そして気づいたときにはロコモすなわち介護予備軍になっているのです。運動器の異常に早く気づくためには運動器を意識することが重要なのです。そこで運動器を意識する言葉としてロコモ(運動器の、機関車という意味を持つ)が提唱されました。ロコモは自立し生き生きとした人生を全うするためのキーワードなのです。健康寿命を延ばしいつまでも元気に歩ける高齢者でいるためにロコモすなわち運動器を意識して下さい。そしてロコモと感じたら早めに対策をとりましょう。(詳細は過去の紙面をご参照下さい)
ロコモティブシンドロームにつながる病気として骨粗鬆症がありますが、医療の進歩により骨量を増やし丈夫にすることがある程度可能となり、骨折を予防できる時代が来ました。明日午後2時から大館中央公民館にて第39回「地域の医療を考える集い」が開催されます。“寝たきり予防の基礎知識、ロコモティブシンドロームと骨粗鬆症”について秋田大学整形外科准教授宮腰尚久先生が講演されます。骨粗鬆症に関する最新の貴重なお話が聞けると思いますので、是非足を運んでみて下さい。
(大館市 平成26年11月28日掲載)