最近の予防接種事情-増える予防接種の上手な受け方-
梅内小児科クリニック
院長 梅内孝倫
【第40回地域の医療を考える集い 大館北秋田の医師4人の講話から①】
予防接種は、私たちが感染症から身を守るために大変有用な医療行為である。個人だけではなく多くの人が予防接種にて感染症を防ぐことにより、他の人への感染も防ぎ社会的な防衛にもなる。最近小児の受ける予防接種は増えており、それだけ感染症を防ぐことでは大変喜ばしいことであるが、大幅に接種回数が増え、その都度医療機関を受診しなければならず、またそれぞれの予防接種ではその回数と接種するタイミングが違い、保護者にとって困惑していることも事実だと思われる。実際予防接種法に基づいて行われる定期接種だけでも以前より肺炎球菌感染症、インフルエンザ菌b型感染症、水痘、ヒトパピローマウィルス感染症(子宮頸がん予防)の予防接種が加わり、それ以外の任意接種でもロタウィルス感染症、B型肝炎、おたふくかぜなどの予防接種を受けることが勧められている。
これらの予防接種は生まれて間もなくから2歳くらいまでに受けるものが多く、そのためぜひ同時接種を理解してすべてのワクチンを期間内に受けてもらいたいと思う。同時接種とは、あらかじめ混合されていない2種類以上のワクチンを、同一の対象者に一度の機会に接種することである。これはわが国ではなじみがなかったと思うが、世界では長年行われてきている一般的な医療行為であり、予防接種の種類や数に特に制限はない。同時接種の十分な実績のある米国など海外においては、単独接種に比べその効果や安全性においても相違がないと報告されている。日本小児科学会では、同時接種に対する考え方を明言し、同接種による予防接種の受け方を推奨しており、3?4年前からわが国でもこのやり方が普及してきている。実際には同時接種といっても定期接種では2?4種類、任意接種が含まれても3?5種類のワクチン接種までで、そのように接種を進めると適切な接種期間にすべてのワクチンが接種でき、しかも医療機関受診も以前の接種の少なかった時と比較してもそれほど変わらなくなる。接種スケジュールは日本小児科学会やNPO法人VPDを知って子供を守ろうの会などのホームページに示されており、そのようなスケジュール表をぜひ活用して漏れなく接種して、ぜひ子供たちを感染症から守っていただきたいと思う。
(大館市 平成28年2月26日掲載)