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症状から見ためまいの原因疾患

ふじた耳鼻咽喉科クリニック院長
藤田繁俊


「めまい」はある日突然やってきて、とんでもない症状を引き起こします。
世界がひっくり返ったかのようなグルグル感、それに引き続き胃液まででそうなくらいゲーゲーと吐いてしまい(実際吐くものがなくなるぐらい吐いてしまいますが)、少しましになったかとちょっとでも動こうものなら、また世界がグルグル回り始め…。本人も周りの家族もびっくりしてしまい、救急車を呼んで総合病院の救急へ運ばれ、2―3日入院して、なんてことになってしまいます。めまいなんてそうそうおこすものでもないし、恐怖感が伴いますのでどうしても過剰な反応をしてしまいます。
しかしながら、明らかに脳卒中に伴うめまいで無い限り、めまいの半数以上は耳から来るめまいです。そして、耳鼻科医はめまいの症状から何の病気かを絞り込んで診断することが得意であると思っています。
今回「地域の医療を考える集い」でお話しさせていただく機会を与えられましたので「主なめまいの発症状況と疾患」についてわかりやすく説明したいと思います。これは秋田大学医学部耳鼻咽喉科石川一夫前教授が講演でお話しになっていたもので、大変わかりやすくまとまっております。ちょっとさわりを紙面にてご紹介致します。
[起き上がったり、寝たりした時の一過性の回転性めまいで蝸牛症状の随伴がない]
寝た状態から起き上がったり、逆に座った状態から寝た状態になったときに数秒から数分間、グルグルと回転を感じるめまいが生じ、更にその時聞こえ方に異常を来さないめまい。このめまいは実は最も多い耳のめまいで、耳から来るめまいの半分以上がこのめまいと言われています。
病名は「良性発作性頭位めまい症」、何か聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。この病気は元女子サッカー日本代表の澤穂希さんが患ったことでちょっと有名になりましたね。
耳の平衡感覚に三半規管と呼ばれる物があります。これも割と聞き覚えのある言葉ではないでしょうか?言葉通り3つの半分の輪が組み合わさった形をしていて頭が回転しているのを感じる神経です。グルグル回っているのを感じる神経ですね。ここに小さなゴミが入るとどうなるでしょう?ちょっと頭を傾けただけでグルグル頭が回ったのと同じ状態になってしまいます。これがめまいとして感じられるのです。
起き上がったり、寝たりすると頭がちょっと動きますよね、そうするとゴミがピュッと動いて耳の神経はグルグル回ったと感じてしまいます。でも実際には寝たり起きたりしただけなのでこの感覚のずれがめまいの感覚になるわけです。暫く動かないでじっとしていると三半規管の中のこの小さなゴミも動きを止めます。そうするとめまいも消失してしまいます。そしてまた頭を動かすと…。
このゴミは元々耳の神経の中にある物なので、サッカー選手のように頭を強く打つ(=ヘディング)とその一部がポロッとかけて三半規管に入ってしまいます。これが良性発作性めまい症のメカニズムと説明されています。耳の神経はご存じのように聞こえの神経とめまいの平衡神経があります。今ご説明しましたとおり、良性発作性めまい症の場合には聞こえの神経の出番はありません。従って、蝸牛症状の随伴がないということも理解していただけたと思います。
実は同じような症状を来しても耳のめまいではないことがあります。もちろん経過を見ると症状は異なってきますので、種々の検査をすることで正しい診断をすることは可能ですが、初めの症状が似ているので注意を要します。小脳の病変や神経変性疾患の場合、似た症状を呈することが知られています。
良性発作性頭位めまい症は良性とある通り時間の経過とともに軽快していくあまり心配の無い病気ですが、小脳の病変は血管が詰まる梗塞や腫瘍、神経変性疾患も徐々に進行する病気ですのでよくならずに他の症状が出てきます。こちらは脳外科や神経内科の先生の出番となります。
このようにめまいがどんな感じでおこったか?聞こえはどうなのか?などといった状況に対してどういう病気があるのかをなるべく簡便に説明して参りたいと思いますので是非会場に足をお運び下さいますようよろしくお願い致します。
(大館市 平成28年11月18日掲載)

 

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