秋田県北鹿地方のオピニオン紙・北鹿新聞

　「北緯４０度秋田内陸リゾートカップ１００㌔チャレンジマラソン」の実行委員会（黒澤芳彦会長）は６日、北秋田市阿仁ふるさと文化センターで会議を開き、同市の社会福祉法人・秋田県民生協会が事務局を引き継ぎ、来年以降も大会を継続することを決めた。同法人の木村久美夫理事長は「続けることができてありがたい。各地区の運営ノウハウを教わりながら頑張りたい」と話した。
　３月の実行委総会でスタッフの高齢化やボランティアの人員不足を理由に、現在の実行委体制で開催するのは３１回大会（９月２４日）で終了すると決定。その後、職員数約６７０人で福祉施設などを運営する同法人が、大会継続に協力したいと事務局継承を申し出た。６月の会長会議で新たな体制に移行することを確認。同法人は実行委を構成する各地区を回り、運営の課題などを聞き取った。
　この日の会議には、６地区の代表者や同法人などの１２人が出席。事務局は体制の移行について経過を説明し、会長会議で▽大会名の継続▽大会回数の引き継ぎ▽ランナー名簿や備品等の継続使用―を承認したと報告。課題となっていた各地区のボランティア不足については同法人が職員を派遣するなどして対応する案を示し、代表者が承認した。事務局はこれまで同様に市交流センター内に設置する。
　各地区との具体的な協力体制などは今後の会合で協議する方針。木村理事長は「地域活性化の上で、なくなってしまうのはいたたまれない大会だった。続けることができてありがたい」と話した。黒澤会長は「私たちも協力していきたい」と述べた。
　来秋の３２回大会は９月２２日の開催が決定。各種目男女年代別表彰を新設し、新体制移行のイベントも予定している。
　このほか今年の大会を振り返り、仮設トイレが不足する箇所があったことなど、反省点を確認した。
　仙北市角館―北秋田市鷹巣間で開催される大会は、地域振興などを目的に１９８９年に始まった。今年９月に開かれた３１回大会には１００㌔の部に９８８人、５０㌔の部に４１４人が出走した。

　今にも動き出しそうなフクロウが、ずらりと並ぶ。セメントで作られた工芸品だ。「納得のいく仕上がりになるまで、途中でやめることはできない」。そう語るのは、制作者の羽澤喜美さん（８０）＝大館市比内町達子。約２０年にわたって趣味で続けており、これまでに約１００点以上を手がけてきた。体の節々は痛むが「あと１年、子どもが喜ぶ作品を作りたい」と気力を奮い立たせている。
　地元の中学校を卒業後、６０歳まで左官職人として働いた。飾り用に上司から頼まれて、アニメ映画「となりのトトロ」のキャラクターを制作したのがセメント工芸に足を踏み入れるきっかけとなった。
　作品完成後、「こうした方がもっと良くなる」と追求心が湧いたという。セメントを扱う仕事の経験を生かして独学で作り続け、腕を磨いた。
　作品は、発泡スチロールを使った骨組みから始まる。大まかな形が出来上がると、小手を使ってセメントで丁寧に肉付け。指などで細部の仕上げを施したら、ヒビが入らないように約３カ月間、直射日光を避けて寝かせる。ペンキで色を塗って１０日間ほど乾燥させたら完成という。
　フクロウやリス、トラなど動物を題材にした作品が多く、アニメキャラクターも手がける。手のひらサイズから高さ約１㍍のものまで自在に制作する。昔は絵や写真を元に作っていたが、今は長年の勘を頼りにしている。かわいらしく見える表現を心がけており、作品を見た子どもから「かわいい」という声が上がる。
　制作は冬に行っており、作業はあくまでも「退屈しのぎ」だと話す羽澤さん。長年続けている理由を聞くと「好きだから」。途中でやめることができない性格で「最後まで納得のいく仕上がりになるまで作り続ける」と職人かたぎな一面を見せた。
　比内芸術文化祭に１０回以上出展しており、先月３日に開かれた同文化祭では、フクロウを中心に約４０点を展示した。
　体力的に年々制作が厳しくなってきたが、「作るのはあと１年。子どもが喜ぶ作品を作りたい」と目標を語った。

　大館市の１２月定例議会は５日、前日に続いて２常任委員会が総括質疑を行った。厚生委（田村儀光委員長）では病院事業経営強化プラン案に質問が集中。扇田病院の無床診療所化について福原淳嗣市長は「方針は変わっていない」と強調した上で「事業の持続性を担保しつつ赤字の幅を縮小する最善の道」と述べ、「無床化は一つの方向性として堅持すべきだ」との考えを示した。
　プランは２０２４年度から４年間。素案では県の２次医療圏再編を見据え、総合病院を県北の中核として機能整備を図る一方、期間内は扇田病院の病床を一定数維持する必要があるとして年度に２病棟を１病棟体制へ見直すとしている。
　委員から「一部で方針転換との見方もある」と問われ、市長は「転換ではない。将来的に扇田病院は現在の形態ではなくなる。人口７万人を切った自治体で、二つの公立病院を維持していくのは無理」と答弁。医療圏再編に触れながら「総合病院は県北の要になる。方向性をしっかりと定めるために、まずは現状に即したプラン案を作成した」と述べた。
　現行の病床数１０４床を２５年度に４０床へ見直す際、看護師配置の在り方を問われた吉原秀一病院事業管理者は「総合病院に来てくれると助かるが、職員の意向を調査し、誰一人とも意に反する退職はない」と答えた。
　プラン案について委員は「期待する」「政治家として英断」などと評価する一方、「しっかりと経営改善を」と求める声もあり、扇田病院の大本直樹院長は「急激な変革による混乱を緩和する意味で良い結果。ただ持続的なものではなく課題も山積み。与えられた時間で今後どういう形がベストか協議し、将来につながる病院事業にしていきたい」との考えを示した。
　来年３月末で廃止する方針が示されている老人福祉センター（通称・四十八滝温泉、雪沢字大滝）について「存続できるよう再考を」との質問があり、市長は土砂災害警戒区域内の立地などに触れながら「有事体制の取り組みを理解していただきたいが、樹海ラインエリアが持つ観光面の可能性は非常に高い。そういう中でどうすれば魅力を再発掘できるか前向きに考えていきたい」と答えた。

　大館市内の小中学校や保育施設で、スマートフォンやゲーム機など電子メディアに接する時間を制限する「メディアコントロール」の取り組みが広がっている。これまでは保護者向けや学校単位での啓発が中心だったが、生徒が児童に、児童が園児に直接呼びかける動きも出始めている。それぞれ、幼少期からの意識づけの重要性を訴えている。
　インターネットの普及に伴い、生活に支障が出るほどオンラインゲームや動画視聴に没頭する「依存症」が全国的な問題となっている。視力や体力の低下、睡眠障害、感情を抑えられないなどの影響があるとされ、トラブルや家族関係の悪化、不登校にもつながると指摘されている。
　同市内では養護教諭で組織する教育研究会学校保健部会が、２０１９年度から小中学校を対象に「一斉メディアコントロール週間」を設定。隔年でメディア使用の実態調査も行い、適切利用と健康的な生活習慣の定着を訴えてきた。
　学校単位での活動や、教職員や市職員による保護者向け講習なども活発に行われてきた。さらに近年は保育施設での活動も始まり、小中、幼保小連携の取り組みも徐々に広がっている。
　４日は桂城小保健委員会の４～６年生８人が城南保育園分園を訪問。年長児１０人に対し、寸劇でメディアコントロールの重要性を訴えた。
　長時間のメディア使用で▽目が悪くなる▽筋肉や骨が弱る▽疲れやすくなる▽イライラする▽頭の働きが悪くなる―などの影響が出ると指摘。「体に悪いことがたくさんある」「使用ルールを決め、メディアコントロールをしよう」と元気に呼びかけた。
　終了後は園児が学んだことを振り返る姿もあった。委員長の小山内杏さん（６年）は「相手は小さい子なので、ゆっくりはきはき言うように気を付けた。自分も意識して生活していきたい」と話した。
　今回は幼少期のメディア使用に課題がある状況を踏まえ、文部科学省の「幼保小の架け橋プログラム事業」で連携体制が強まったことも縁で企画した。同じく学区内の沼館保育所にも、年度内に訪問する計画という。
　佐藤啓子養護教諭は「幼い年代からメディアを使用する傾向が強まっている。低学年で既に寝る時間が遅い子もいる。幼少期から取り組むことでより効果がある」と考えている。

　北秋田市の大館能代空港で２５日夜、航空機の運用時間外に滑走路を歩くイベント「ランウェイナイトウオーク」が行われた。市内を中心に家族連れなど１０人が参加し、普段は入ることができない夜の滑走路から星や航空灯火を眺めた。
　空港利用促進協議会（会長・福原淳嗣大館市長）が主催し、３年目。星空をテーマに航空機や空港について学び、親近感や愛着を持ってもらうことで利用促進につなげようと開いている。
　今回は県北地区から家族連れや個人など１０人が参加。能代市を拠点に星空を活用した地域・施設活性化事業などに取り組んでいる合同会社「ほしあわせ」の八巻枝美代表が講師を務めた。
　参加者は保安検査場を通った後、午後６時３０分発の東京羽田行きの便をターミナルビル付近の制限区域内から見送った。ビル内では、空港で働く職員が航空機を安全に離着陸させるための支援を行うステーションコントロールや、航空機の整備に関する業務について説明。気象条件を確認するためのシステムや航空機を滑走路まで移動させる方法など、安全運航のための業務に理解を深めた。
　再び外に出ると、出発した航空機が通った経路をたどり、飛行機の駐機場所から誘導路を通って長さ２㌔、幅４５㍍の滑走路の中央へ向かった。滑走路に到着すると、カウントダウンとともに航空灯火を点灯。県空港管理事務所によると、滑走路には約７００個のライトが設置され、夜間や霧の発生時にパイロットの離着陸の目印になるという。参加者は滑走路の端まで連なる光を眺め、普段は見られない景色を写真に収めていた。
　この日は雪が降り、星空はほぼ見えなかったが、滑走路までたどり着くと雲間から月と木星が顔を出した。八巻代表によると「天気が良いと空港周辺はさえぎるものがなく、星がとても見えやすい場所」という。航空灯火が消えると織姫星（ベガ）や北極星も見え、参加者は八巻代表の解説を聞きながら空を見上げていた。
　親戚と一緒に参加した大館市二井田の一関脩輝さん（１１）は「滑走路から見るビルのネオンライトや誘導灯火がきれいだった。空港について知らなかったことがたくさんあった」と話していた。

　北秋田市の綴子神社（武内尊英宮司）に奉納する大しめ縄作りが２６日、綴子児童館で行われた。同神社氏子青年会（三澤満会長）の会員らが来年の豊作や安全を願いながら、長さ約１２㍍、最大直径約４０㌢の大しめ縄を完成させた。
　大しめ縄を住民自らの手で奉納しようと、師走が近づくこの時期に同青年会が中心となって２０年ほど前から行っている。今回は会員ら１５人が参加し、午前９時ごろから作業に取りかかった。
　材料のスゲは、８月に岩谷地区で刈り取り、乾燥させたものを使用。会員らはスゲの束をつぎ足しながら２本を編み上げた後、残り１本を巻き付けていった。数人がかりで行う力作業の連続。会員らは息を合わせて協力しながら、しめ縄を形作っていた。
　鳥居に飾る大しめ縄のほか、神社に飾る長さ約２㍍の「大根じめ」も製作。それぞれを奉納するとともに、飾り付けた。三澤会長は「新しいしめ縄で地域の安全や豊作を願いたい」と話し、武内宮司は「毎年作っていただきありがたい。今年は大雨やクマなど災いが多かったので、良い年を迎えられたら」と期待を込めた。

　昨年８月の記録的大雨で被災した大館市の河川や農地などの災害復旧工事が、一部で入札不調が続いている。事業者の人手不足が要因とみられ、農地・農業用施設は約３割が未契約となっている。復旧の遅れや被災箇所の拡大につながる恐れがあるとして、市は等級格付けや地域区分を緩和するなど発注方式を見直しており、早期受注につなげたい考えだ。
　北鹿地方は昨年８月３日と９～１３日に大雨に見舞われた。道路の路肩損壊や河川の護岸損壊、農地・農業用施設への土砂堆積などが相次いだ。同年１０月以降の災害査定を経て、国の補助金を活用した復旧工事を進めている。
　農業関連は農地１８カ所と農業用施設３９カ所の合わせて５７カ所が被災した。査定決定額は３億４２７７万円。これまでに４０カ所は契約済みで、多くは年度内に工事が完了する見通し。
　農地７カ所、施設１０カ所は未契約のまま。市内業者の人手不足が要因とみており、復旧事業にまで手が回らないのが現状という。
　市は、地域区分を市内から県内に広げたり、等級を下げたりして条件を緩和して対応。今年６月からは柔軟な工期の設定を通じて資材や労働者の確保を図る「余裕期間制度」も導入した。
　多くの業者が入札に参加できるよう発注を続けているが、業者の労働力不足が響いているのか効果は限定的という。農政課の担当者は「被災箇所を放置すれば、大雨などで被害が拡大する恐れもある。今後もなるべく請け負いやすく条件を整えたい」と話す。
　河川・道路関係は被災した３７カ所を３２工事にまとめて発注している。査定決定額は６億５５９２万円。ほとんどが契約済み。被災延長が長い２工事が残っている。
　このうち鹿角市との市境に近い別所川では、水があふれて田んぼに土砂が流れ込み、護岸ブロックが流されるなど大きな被害があった。周囲には上流から流れてきたと思われる流木も多数放置されている。
　林道施設は１億８８６７万円の災害査定を受けて、被災した１５カ所の復旧を進めている。すでに１１カ所が完了しており、残りも年度内に完成する見込み。

　「きりたんぽ鍋」や「けいらん」「鹿角ホルモン」といった多彩な郷土料理がある鹿角市で２５日、豊かな食文化について考える「鹿角の郷土料理シンポジウム」が開かれた。市内外から約５０人が参加。フードジャーナリストの向笠千恵子さんの講演や郷土料理の試食会などを通じて、鹿角の食の魅力を再認識するとともに、観光誘客に結び付ける取り組みに期待した。
　日本の伝統的な食文化である「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されてから今年で１０周年となることから、農林水産省と文化庁が記念イベントを推奨。こうした中、市でも関連イベントを開催することにした。
　開会あいさつで関厚市長は「鹿角の郷土料理は、ほぼ和食として認められることから、世界級の文化遺産である食文化を理解する機運を高めていきたい」と強調。同市の文化・自然遺産を観光に活用するヘリテージ・ツーリズムに触れ、「これに郷土料理を加え、さらなる誘客促進に向けてプロモーションを行っていく」と意欲を示した。
　講師の向笠さんは新聞、雑誌、テレビの食番組などで幅広く活躍。今回は「郷土料理でもっと元気に」と題して講演した。
　向笠さんは和食がユネスコ遺産に認定された理由について「日本は南北に長く、地域性、風土がさまざまで四季の食材が多彩。それらの持ち味を発揮させる素材を重視した調理法が実に豊か」などと説明し、「和食は郷土料理あっての物種。人々の心のよりどころになっている」とした。
　能登地方の発酵食や地元の食材で作るイタリアンが人気の民宿を紹介。「昔のものを再現しただけでは今の時代の味覚には合わない。これを踏まえ、個人個人の好みでなく、郷土料理を構築していくと広く支持されるのでは」と持論を展開した。
　鹿角の食にも言及し、「ニシン漬けはもっと発信されれば、首都圏で注目度が上がると思う」などと語った。
　続いて、関市長がコーディネーター、向笠さんがコメンテーター、市内飲食店の関係者ら４人がパネリストを務め、パネル討論を開催。「郷土料理～『食』を通じた観光誘客について」をテーマに語り合った。
　この後、郷土料理の試食会を開催。きりたんぽ鍋、鹿角ホルモン、けいらん、かづの牛、けの汁などが用意され、参加者が舌鼓を打ちながら和やかに交流した。

　冬型の気圧配置の影響で北鹿地方は２５日、今季初めてまとまった雪が降った。市街地がうっすらと白く染まったほか、大館市の鳳凰山（標高５２０・６㍍）では中腹の駒形「大文字」が雪化粧。各地で本格的な冬の到来を告げる光景が広がった。
　秋田地方気象台によると、冬型の気圧配置が続いたほか、北日本の上空約５０００㍍に氷点下３６度以下の寒気が流れ込んだ影響で、本県は降雪に見舞われた。
　午後４時現在までの最低気温は大館市、北秋田市鷹巣で氷点下１・２度（午前６時５４分、同６時３４分）、鹿角市で同２・５度（同８時４５分）、同市八幡平で同５・５度（同６時１４分）など。平年より１～４度低く、北鹿７観測地点全てで今季最低を記録する冬日となった。
　未明から昼ごろにかけて降雪が続いた大館市では、鳳凰山の大文字が白く浮かび上がった。またツツジやユリノキなど約８００本が植えられている県指定有形文化財・鳥潟会館は、紅葉シーズンを終え、庭木の冬囲いの真っただ中。この日も早朝から平萬造園土木（同市出川）の従業員３人が作業に取りかかり、樹木に積もった雪を払いながら枝を縄で縛ったり、つり上げたりした。
　雪が降りしきる中での作業。同社の山内篤志専務（４２）は「あっという間にこの時期が来た」と口にし、「冬囲いは雪で枝が折れないようにするもの。無事に冬を越し、来春に立派な立ち姿を見せられるよう安全に気を付けて作業を進めたい」と話した。
　２６日の県内は寒気や低気圧の影響で、雪や雨が降る見込み。朝から冷え込み、北秋田市鷹巣で最低気温０度を予想している。