月に一度ほど、私は渋谷へ行く機会がある。 駅前のハチ公銅像の前には、外国人観光客の長い列ができていて、みんな笑顔で“HACHI”と呼んだり、ハチ公像をよしよししたりしながら写真を撮っている。 大館に移住する前の私にとって、ハチ公は単なる「渋谷の待ち合わせ場所」だった。 “ハチ公=渋谷”。それ以上の感情はなく、「今日も人が多いなぁ」と思う程度だった。
けれど、今は違う。
渋谷でハチを見るたび、心の中で「ハチ、今日もお疲れさま。今日も人気者だね!」と声をかけてしまう。なんだか自分の親戚の子が頑張っている姿を見守るような感覚なのだ。そんなふうにハチを想うようになったのは、2023年の「ハチ公生誕100年プロジェクト」に携わってからだ。 大館には、今も“ハチと秋田犬に寄り添う人たち”がいる。そのことを、私はプロジェクトを通じて知った。 ハチの物語が生まれたこの地には、この100年間、ハチを守り、秋田犬を守り、大切にしてきた人たちがいる。 そう気づいたとき私は、この地域のハチや秋田犬に関わる人たちの話をもっと聞いてみたくなった。
富樫安民さんも、ハチ公と秋田犬に長く濃く関わってきた方の一人。安民さんとハチ、そして秋田犬とのストーリーを紹介したい。