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歌で綴る教育へのエール

秋田大学客員教授 北秋田分校長 三浦 栄一

 コロナ禍の中で、生活や活動の制限・自粛が余儀なくされ、それは教育も例外ではなく、昨年2月の全国一斉休校からはじまった未曽有の状況は様々な影響をもたらしました。
それでも、学校現場は、先生方は、明日の子どもたちの笑顔のために懸命に取り組み、歩を進めています。ギリギリのところで選択や判断をしながら工夫を重ね、保護者の理解を得ながら、日々の授業の充実を図り、豊かな活動を模索し続けています。それはきっと未来の秋田を担う子どもたちの心に、大きな希望の灯をともしたはずです。また、子どもたちの笑顔やがんばりが、地域の方々の困難を乗り越えていく元気の源になっています。
 危機的な状況の中で奮闘する先生方、子どもたち、保護者の皆さん・地域の皆さんに、歌でエールを送ります。学校現場にいた時に創った曲を中心に、その曲への想いを書き記しました。

Vol.9①スト-ンサークル賛歌「時空をこえて」

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Vol.9①スト-ンサークル賛歌「時空をこえて」(5987KB) NEW

Vol.9①スト-ンサークル賛歌「時空をこえて」
作詞・作曲:平成24年度鹿角市立十和田中学校生徒 補作:三浦 栄一 

長い歴史が伝えてくれる 自然の恵みに対する感謝を
風に吹かれて大空に舞い 2つの時代をつなぐ オキナ草の生命
※時空をこえて 語りかけるよ
  縄文からのメッセージ  今 ストーンサークルに

長い歴史に思い馳せれば 大地の星座が地球にきらめく
ぼくらのキセキ 礎となり  輝く未来信じて 明日へと歩んでいく  
緑の光 君を照らして
  未来の道を示す 今ストーンサークルに ※繰り返し



②「未来への約束」
作詞:平成29年度大館市立釈迦内小学校児童 補作詞・曲:三浦 栄一

君と種をまいた ヒマワリが咲いた朝   落ち込んでたココロ すぐに晴れたよ
君と教室で あいさつを交わしたら    一日大丈夫 元気でいれる
 そんな学校が 僕らのふるさとさ
  未来への贈り物 僕らは小さいけど  友達と過ごした日 忘れはしないよ

君とのハイタッチ 釈迦ナイスと笑った  さくらンジャーのよう カッコイイかな
地域の人が好き やさしい笑顔が好き   励ましの言葉で 歩いていける
 そんな釈迦内が 僕らのふるさとさ
  未来への贈り物 僕らは小さいけど  大好きなこの街を 希望で包むよ

釈迦内で育って 釈迦内で笑って
未来への贈り物 僕らは小さいけど  大好きなこの街は 僕らが守るよ

未来への贈り物 季節(とき)がいくつ過ぎても 
大好きなこの街は 僕らが守るよ     ずっと守るから…  


 今回は各学校で行われている「ふるさとキャリア教育」について考えてみました。(※秋田県では平成5年度から「ふるさと教育」を学校教育共通実践課題として取り組んできました。現在は「キャリア教育の趣旨を生かしたふるさと教育」という理念で「ふるさと・キャリア教育」として行われています。大館市では「・」をつけません。どうしてでしょう。とても重要なことですが、それはいずれまた)
一つはっきり言えることは、「自分のふるさとはこんなに素敵だよ。自分はこのふるさとを~にしたい・ふるさとで~したい!」と言える児童生徒を育てることが、まちがいなく教育の使命であること。そのポイントは、ただ一つ。ふるさとの「ヒト・モノ・コト」を自分の目で、足で、五感で確かめ、「自分事」として「価値付け」ること。

1 時空をこえて~キセキ
 北海道・北東北の縄文遺跡群がまもなく世界文化遺産に登録になります。この中に我が北鹿地域の北秋田市「伊勢堂岱遺跡」、鹿角市「大湯環状列石」が含まれることは大きな誇りです。その大湯環状列石をモチーフに、10年前十和田中生が創った歌が「時空をこえて」です。当時の佐藤亨校長先生が、世界遺産登録を目指していた大湯環状列石に地元の中学生としてかかわらせたいという願いと発想から始まりました。「大湯環状列石魅力アッププロジェクト」と名付けられた「ふるさと・キャリア教育」。生徒は、複数のプログラムから一つ選択し、具体的な内容を自ら考えて実践することで課題解決に向かいました。教師がお膳立てをし過ぎると生徒の力にはならない、失敗させることも大きな経験になるという考えから、少人数で責任をもって活動に当たらせ、多くの人材と交流することを基本にしました。その一つがこの歌です。
 8人の生徒がこのプログラムにかかわりました。環状列石の現地調査を改めて行い、フィールドワークをし、地域の方の願いを聞き取って「縄文からのメッセージ」をテーマにしました。伝えたいイメージを共有し、歌詞にどう表現するかを考え、一つ一つの言葉にまでこだわりました。キセキは「奇跡」であり、「軌跡」「輝石(緑色を放つ翡翠のこと)」。私がウーン、すごい!と唸ったのはストーンサークルを「大地の星座」と表現したことです。縄文からのメッセージに真剣に耳を傾けた時、彼ら彼女らの目の前にその時代の景色が広がったにちがいありません。それは環状列石が「自分事」になった瞬間でした。この歌は学校祭での劇のクライマックスの全校合唱となり、毎年夏至の日に大湯環状列石で行われている「夕日を見る会」で歌い継がれてきました。歌詞には現れませんが、メッセージとして感じたことに「命のつながりの尊さ」「自然界の恵みへの感謝」「生きていく知恵と協働・共同」などがあげられました。今まさに「時空をこえて」世界文化遺産登録が現実となり、この後を担う彼らのキセキはまた時空をこえるのです。

2 未来への約束~ボクらは小さいけど
 県内外まで知られるようになったひまわり活動「釈迦内サンフラワープロジェクト(略称:釈迦内SP)」。この活動は、私の先代の五十嵐経校長先生の発想による先駆的・独創的(向陽に根差す根拠性、素材の魅力・可能性、つながりの構築、発展・波及性、オリジナリティ、展開力、付加価値等々)な取組です。「学校は地域にどうあればよいのか」を問いかけ、地域に響鳴し、大きなうねりとなりました。釈迦内SP実行委員長を務めた日景賢悟さんの明瞭で分かりやすいコンセプトと行動力のもと、釈迦内まちづくり協議会会長(兼リアルかかしマイスター※筆者命名)の伊藤秀夫さん、釈迦内婦人会会長の小田壽子さんをはじめ、地域の大人がたくさんかかわりました。大人がひまわり活動を「自分事」として「価値付け」、子どもたちだけでない「大人のふるさとキャリア教育」が展開されたのです。振り返ると子どもたちも大人も、汗と笑顔が最高に輝いていました。
 「未来への約束」。この歌はひまわり活動に取り組む児童が、学校や地域への思いを歌詞にしたものです。子どもたちは何を約束したのでしょうか?私が全校児童から集めた言葉には「地域への感謝」の言葉が数多くありました。中でも低学年の子の言葉にドキッとさせられました。「ちいきの人といっしょにひまわりをうえたり、たねをとったりするのはとってもたのしいです。わたしもやさしくなりたいです。わたしはまだ小さいけど、今できることをがんばります。大きくなったらかならずおかえしします。」これが約束でした。
 学校が閉ざされていると言われた頃、「ものごとを学校の中だけで完結しよう」としていました。それが今では「ふるさとキャリア教育」で、フィールドは大きく広がりました。地域の方とのココロのキャッチボールはやっぱり「自分事」として「価値付け」られて、「三つ子の魂100まで」のようにココロに根付いていたのでした。

 <歌詞用語解説>
① 「釈迦ナイス」。釈迦内とナイスをかけ合わせた合言葉(造語)。物事を始める時のかけ声やエール、やり遂げた後の一体感、成就感を表現する時に使う。写真撮影や乾杯の発声にも多用。
② 「さくらンジャー」。「自立・創造」を目指す独自戦隊キャラクター。「桜三心」のビューティフルレッドや「向陽三行」のチアイエローなど、その年度に児童が発案。「なりきる楽しさ」で教育目標を具現化。

Vol.9②「未来への約束」Vol.8 ABCD Phonics

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②「未来への約束」(7653KB) NEW

Vol.10  教育の街 イーハトーブ大館~子どもたちの未来へ~

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Vol.10  教育の街 イーハトーブ大館~子どもたちの未来へ~(5702KB) NEW

作詞:高橋善之 作曲:三浦栄一

道端にひそかに咲いている花にも
命輝くから笑顔になる

慈しみにあふれ やさしさ響き合う
ふるさとはいつでも心の場所

 風よ 光よ 大地の温もりよ
 永遠の幸い 子どもたちの未来へ

輝くまなざしにふと胸が熱くなる
大館は豊かなイーハトーブ

 星よ 光よ 宇宙のささやきよ
 永遠の幸い 子どもたちの未来へ

希望という種を持ち続ける限り 
大きな花が咲くイーハトーブ
  イーハトーブ…

 あの猛暑は本当だったのかどうか忘れるくらい、吹く風と虫の声に秋を感じる季節になりました。学校は2学期が始まり、子どもたちの歓声が戻ってきました。と言っても、新型コロナの感染拡大に細心の注意と入念な対策に骨の折れる毎日、真の笑顔を取り戻すにはまだまだ先と言えるのかもしれません。
 さて、この曲は大館市教育委員会教育長の高橋善之先生の詞に曲をつけたものです。イーハトーブは、『銀河鉄道の夜』をはじめ、数々の童話や寓話、詩などを遺した宮沢賢治の造語で、心象世界にある「理想郷」を指す言葉。誰もが一度はきいたことがあるでしょう。教育の街イーハトーブ大館を標榜し、ふるさとキャリア教育を核にした希望への営みは、今や全国の教育同志に響鳴し、共に高みを目指す取組へと進んでいます。
 高橋先生が「教育おおだて」の巻頭言に、東日本大震災の年と時を同じくして始まった大館の教育の矜持について次のような文章を記しています。「汚れなきふるさとに根ざして生きることは無常の幸いである。(略)未来への責任を果たすため、心して進めてまいりたい」(平成年6月)、「(略)あれから9年、被災地には巨大防波堤が建設され復興も進んでいる。まだ道半ばとはいえ、大館では教育が生み出す希望が防波堤の役割を果たし、その中で『教育の街イーハトーブ大館』が形成されつつある」(令和元年8月)。今回は教育の求める豊かさや幸いの「カケラ」を探してみたいと思います。豊かさも幸せも、物質ではなく「心の中」にあること、また、対象(環境も含め)との「かかわり」の中で生まれることをふまえて…。
希望という種~豊かさ ある一遍の詩から。「北東北子どもの詩大賞」の作品です。「北東北子どもの詩大賞」(亀谷健樹委員長)は、これまで年にわたり、北東北3県(青森県、岩手県、秋田県)の小・中学生を対象に、詩作を通じて感性を引き出し、未来に向けて夢と希望のある人間形成を図るために継続してきた児童詩コンクールです。私は合川に勤務し、子どもたちが作品応募して、恥ずかしながら初めて出会いました。委員長お薦めの作品を紹介いただき、とても感動したことを覚えています。第8回の合川南小1年生の『ばった』という作品です。「こうていでばったをみつけたよ ぴょんとはねたよ ぼくのせよりたかいじゃんぷ つかまえたら、あしのとげがいたかったよ むしかごのおうちにいれてあげたら ぴょんぴょん、なんどかはねて やねにぶつかって、ばしっばしっとおちた いたいだろうな ばったのほんとうのおうちのやねは、 たかいたかいそらだからな どんなにじゃんぷしても ぶつからないんだよな ぼくは、つかまえたばったを そっとにがしてあげたんだ ぴょおおん、 たかくたかくじゃんぷしたよ」。バッタのお家の屋根が空だと思える感性、「ぶつかって落ちたら痛い」と感じる思いやり、逃がすと「ピョーン」と高く高くジャンプしたバッタの解放された自由に寄り添う心…。わずか小学校1年生の、大きな自然・一つの命と対話した躍動感あふれる瑞々しい感性とやさしさ。これこそ希望の種です。
一人たりとも置き去りにしない~慈しみと励まし 「一人たりとも置き去りにしない教育」。高橋先生が常々口にされる、大館の教育の根幹をなすものです。その根っこにあるのは「慈しみと励まし」。
 次に紹介するのは、ある学校の研究会から。この研究会は、教育支援員の支援の状況を見ながら、子どもたちにとってよりよい支援のあり方を見出すために、指導の先生を招いて行うものでした。教育支援員は、学校内における学習面や生活面で教育的支援が必要な児童や生徒に対して支援や介助を行う職務を担います。日常生活・学習活動・教室間移動等における支援、健康や安全確保など、その内容は多岐にわたります。その教育支援員は、特別な支援を要する子の支援を行っていましたが、はたから見ると大変難儀をされていることがよく分かりました。でも、その子への心配りや接し方、声かけがどれだけすばらしかったことか。授業参観後、協議になり、指導の先生から「どんなことを思って支援に当たっていますか」と問われたその方は、自分の支援の苦労や子どもの大変な実態などについて一言も発しませんでした。その教育支援員はこう答えたのです。「私はこの子の最後まで味方になる存在でありたい」と。高橋先生の言われる「未来への責任」、「慈しみと励まし」を見たように思いました。巷で起こる子どもを巻き込んだ痛ましい事件や事故に接するたびに思うのです。この慈しみと励ましの「カケラ」でもあったらと。
ふと胸が熱くなる 「感動すると、人は何度でも人生を生き直せる(新しく生きられる)」ときいたことがあります。豊かだと思える場面や幸せだと感じる瞬間との出会いは、「感動」が体を包みこんでいるのでしょう。「ふと胸が熱くなる」のはその出会いがくれるものです。吉野弘さんの詩にこんな一節があります。「(略)無理な緊張には 色目を使わず ゆったりゆたかに 光を浴びている方がいい 健康で風に吹かれながら 生きていることのなつかしさに ふと胸が熱くなる そんな日があってもいい そして なぜ胸が熱くなるのか 黙っていても 二人には分かるのであってほしい」。「生きていることのなつかしさ」と「黙っていても分かる」営みは、教育の求める豊かさと幸せにつながるかもしれません。
 イーハトーブは、山を越え、海を越え、やがて銀河鉄道の夜で描かれた透明なレールを走り、はるか天空まで昇り、永遠へと向かう…。わずか「一杯の水」が豊かで、幸せだと感じたこの夏を思い出しながら…。

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