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歌で綴る教育へのエール

秋田大学客員教授 北秋田分校長 三浦 栄一

 コロナ禍の中で、生活や活動の制限・自粛が余儀なくされ、それは教育も例外ではなく、昨年2月の全国一斉休校からはじまった未曽有の状況は様々な影響をもたらしました。
それでも、学校現場は、先生方は、明日の子どもたちの笑顔のために懸命に取り組み、歩を進めています。ギリギリのところで選択や判断をしながら工夫を重ね、保護者の理解を得ながら、日々の授業の充実を図り、豊かな活動を模索し続けています。それはきっと未来の秋田を担う子どもたちの心に、大きな希望の灯をともしたはずです。また、子どもたちの笑顔やがんばりが、地域の方々の困難を乗り越えていく元気の源になっています。
 危機的な状況の中で奮闘する先生方、子どもたち、保護者の皆さん・地域の皆さんに、歌でエールを送ります。学校現場にいた時に創った曲を中心に、その曲への想いを書き記しました。

Vol.4 永遠

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(mp3)

Vol.4 永遠(6103KB) NEW

ここで過ごしたことも 今日のこの日のことも
君はいつか忘れてしまう そんな日来るかな…
声をからして叫んだ 運動会の応援
フェスティバルの歌や劇も 君は輝いていた
ケンカをした 共に泣いた 友だちがいつもいたよね
  君がつらい時は青い空を見上げて  君の弾けてる笑顔が好きだよ
  同じ空の下で 僕たちはつながっている  君が歩くその道も一人じゃないよ

何気なく過ごしてた当たり前の日常
それがどんな奇跡なのか 君は気付いたはず
お父さんやお母さんが 先生が見守ってたね
  君が疲れた日は菜の花を描いて  君の差し伸べる やさしさ好きだよ
  同じ季節の中 僕たちはつながっている  たとえ遠く離れても幸せ祈ってるよ

  君の卒業アルバムにも勇気の種を詰め込んで
   君は君らしく はばたいて明日へ  夢を追いかける瞳が好きだよ
   同じ瞬間を 生きた僕たちは永遠  青い空も菜の花も君に生き続ける
 ずっと思っている…




 いよいよ卒業のシーズンになりました。この曲は、教職最後の昨年3月、卒業生に贈った歌です。2月27日、安倍前総理大臣による突然の3月2日から春季休業までの全国一斉臨時休校の要請。いまだかつてない事態に誰もが大きな不安と戸惑いの中にいました。何よりも辛かったのは「卒業」という人生の節目を迎えた6年生だったでしょう。物事の「節目」は段階的な心の準備を経て、けじめをつけるための「儀式」が必要となりますが、突然「ランドセルを背負える最後の日」がやってきたのです。6年生の教室の黒板には卒業までのカウントダウンとがんばることが書かれたカレンダーが貼られていました。そのカレンダーは「卒業まで12日」で止まりました。学ぶことのできないもどかしさ、友達と会えないせつなさ、どこにもぶつけようのない虚しさ、憤り…。それは、これまで手塩にかけて育てた子どもの晴れの姿を見届けたいと願う保護者にとっても同じ。一変した日常の中で、子どもたちに何を伝えられるのか、新しい環境ではばたけるエネルギーを注ぐことができるのか、限られた条件の中で精一杯のことを模索し続けた日々でもありました。「卒業」。たどり着いたのは、ここで過ごしたすべてが「永遠」であること…。

奇跡~「有り難い」日常 元気に「行ってきます」「行ってらっしゃい、気を付けて」、笑顔で「ただいま」「お帰り」と響き合う声。友達と交わすあいさつもそこそこにグラウンドに飛び出し、サッカーに興じた朝。そんな何気ない日常が当たり前でなかったこと…。私たちが生きて輝けるのは、当たり前ではない「有難い」=「奇跡」の連続。そして、必ず周りに自分を見守る、励ます、誰かがいてくれます。父母、家族、友達、先輩・後輩、地域の方々、そして先生…。これはコロナ禍であろうとなかろうと、忘れないでほしい大事なこと。
 「有り難い」日常は、しっかり地に足をつけて生きていける、安心して自分を表現できる拠り所になっていたのです。
エンゲージメントの宝箱 「あれ、なんか声がガラガラだ」。どうしたんだろうと思うと「そうか、昨日の運動会で、あんなに叫んで応援したもんな」と気付いた思い出はありませんか。また、解き方が分かって夢中で計算問題に取り組んだ算数の時間、物語の世界に入り込んであっという間に終わった読書タイム、最初は緊張していたのにみんなの歌声に包まれ体ごと揺れて歌っていた合唱等々、「我を忘れた」状態になったことはありませんか。
 「いま、ここでの心理的な没頭状態」のことを心理学では「エンゲージメント」と表します。(参考:鹿毛雅治「学習意欲の理論」)学校はエンゲージメント、没頭できる状態を生み出し、個と集団を高める宝箱なのです。
 子どもは向かうものがあれば、活動に無我夢中で取り組みます。例えばさきほどの合唱。子どもたちの波動のような歌声は感動ものです。すごい力が育ちます。目標を実現するための「日々の努力」、高みに向かう「チャレンジ精神」、友達との意見の衝突や葛藤を通した「コミュニケーション力・自己コントロール力」。歌っている時の「一体感」。歌い終えた時の「達成感・成就感」。没頭しているからこそ生まれた力です。そして、友達がいつも傍にいました。卒業はそのことを振り返る機会でもあったのです。
永遠~一期一会 一期一会。大好きな言葉です。茶道に由来するこのことわざは茶会に臨む際には、その機会は二度と繰り返されることのない、一生に一度の出会いであるということを心得て、場にいるみんなが誠意を尽くす心構えを意味していると言われます。二度とない空間、時間を精一杯生きる。翻って教育も同じ。織りなす活動の「一瞬一瞬こそが永遠」。
 卒業式は、卒業証書授与、呼びかけや歌、すべてがぶっつけ本番でした。子どもたちは、それでも最高に輝いていました。今の今というこの瞬間を永遠に昇華させているようでした。新しいステージに向かって力強く歩き出せることを確信しました。そして、たとえ記憶が風化しても、きっとこの日のこと、この学校で過ごしたことは魂の奥底で生き続ける。同じ空の下、同じ季節の中でつながっている…。永遠を実感した瞬間でした。

 卒業式に保護者に入っていただくことは叶いませんでした。ですが、退場後、外に出た子どもたちは、迎えた保護者を前に「呼びかけと歌」で6年間の想いと感謝を表して卒業していきました。雪がひとひら舞う弥生の空に響いた声は確かに澄み渡っているのでした。

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