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創刊100周年企画 古今「秋田犬」

第2部 アメリカ編

私財投じ広大なペット霊園 「アベイ・グレン」ニュージャージー ハチ公と上野博士の像 開設者のクックさん許可得てレプリカ制作
2018-11-05
「日本の物語を多くの人に知ってもらいたい」と話すクックさん
 海岸沿いでニューヨーク市マンハッタンの高層ビル群を眺めることができる、ニュージャージー州ニューアークから西に車で約1時間。日本の田舎町によく似た風景が広がり始めると、公園墓地が現れる。ペット霊園の「アベイ・グレン・ペットメモリアルパーク」だ。
 およそ10㌶の広大な緑が広がる。きれいに刈り込まれた芝。小高い丘。みずみずしい木々。ゴルフ場のように手入れされた敷地内に6000匹以上の動物が静かに眠る。犬や猫から海ガメ、競走馬まで、祈りをささげる対象に制限はない。オーナーのデレク・クックさん(59)が動物を愛する気持ちは、公園に足を踏み入れた瞬間に感じることができる。
 クックさんを訪ねた目的は、事務所脇のスペースに鎮座する銅像にある。一匹の犬と、人間が再会を喜ぶ姿。東京大学農学部のキャンパスに建てられた、ハチ公と上野英三郎博士の銅像のレプリカである。クックさんは、銅像建立の経緯について、こう語る。
 ハチ公没後80周年を記念して2015年に建てられた、ハチ公と上野博士の銅像の存在をインターネットで知った。ハチ公の物語に感動したクックさんは、同じものを霊園に設置したいと「ハチ公と上野英三郎博士の像を東大に作る会」に連絡するが、良い返事はもらえなかった。そこで、アメリカでハチ公をテーマにした小説を出版した、作家のマクドナルド由美さんが仲介役を担った。約1年の調査期間を経て、設立の許可が下りた。クックさんは建築家に制作を依頼し、私財をなげうって16年に完成させた。銅像の側にはハチ公の物語を書いた彫刻も設置した。
 「日本の物語を多くの人に知ってもらいたい」。クックさんの熱い思いが、海を渡った。「ハチ公が特別な犬だったことを忘れないでほしい」と、霊園を訪れる人に訴えかける。まだまだハチ公に関する知識がある人は少ないというが、毎日2、3人は銅像を眺め、彫刻の前で足を止める。「ここから世界に伝えていきたい」と願いを込める。
 なぜ、一人のアメリカ人がハチ公に対し、これほどまでに情熱を注ぐのか。疑問に感じたとき、クックさんの人柄が見えた。両親がシャンプーなどのペットの世話を仕事にしており、幼い頃から動物に触れる機会が多かったクックさん。その中で、死んだペットをどうすればいいのか。答えを出せない日々に葛藤した。
 大人になると、ペット霊園の建設に着手した。海兵隊の仕事を辞め、弟のケブンさんらと2年掛けてトウモロコシ畑を開拓。1982年に霊園をオープンさせた。初めは、周りから「ペットの墓地なんか造って」と笑われた。それでも意志は曲げなかった。「ペットと別れた悲しさがやわらぐような、平和な場所にしたい」。今では国内最大級のペット霊園として、多くの人がアベイ・グレンを頼ってくる。
 クックさんは、自らの経験とハチ公の物語を重ね合わせたのかもしれない。決して、悲劇ではない。人間と動物の信頼関係は、いつまでも胸の中で生き続けると。銅像はその象徴として、飼い主の心を癒やしていくのだろう。
事務所脇に鎮座するハチ公と上野英三郎博士の銅像
道路沿いでアベイ・グレンの看板が目を引く
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