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糖尿病性網膜症について

小林眼科医院
院長 小林 真


 糖尿病には三つの大きな合併症があります。糖尿病性腎症、糖尿病性神経症そして糖尿病性網膜症です。この三つが揃う糖尿病は相当進行した状態と言えますが、比較的高頻度で認められるのが「糖尿病性網膜症」です。
 日本の成人の失明原因の第1位は緑内障です。第2位がこの糖尿病性網膜症ですが、数年前までは1位でした。依然として重大な失明原因である糖尿病性網膜症は、内科的治療と並行して治療が行われる必要があることは言うまでもありませんが、時として内科的なコントロールが上手くいっていても、網膜症は「一人歩き」してしまう厄介な合併症と言えます。
 糖尿病を発症してから5年、10年、15年と、5年毎に糖尿病性網膜症の発症と進行が認められることが多く、糖尿病と診断された場合は、なるべく早期に眼科受診をして網膜症の有無を確認する必要があります。時には、別の病気で眼科を受診した際に網膜症が発見され、糖尿病であることが発覚する場合もあります。
 さて、そもそもこの網膜症とは何なのか?
 糖尿病によって血糖値が高い状態が長い間続くと、網膜の血管に微細なこぶが出来たり、細くなったり詰まったりします。このような血管の変形が起こると、網膜の隅々まで血液が行き渡らなくなり、網膜の細胞は酸欠状態になります。人間の身体はうまく出来ていて、酸素不足になっている場所に新しい血管を生やして酸素を供給しようとする働きを持っています。この新しい血管を新生血管と言いますが、本来存在しないところに新たに生えてくるこの血管はとてももろく、容易に出血をしてしまいます。
 網膜に出血が起こると、網膜の機能が低下したり、血液による混濁のために視力が低下します。また、出血を繰り返すとそこに増殖膜という「かさぶた」のようなものが出来ます。これが徐々に網膜を引っ張り、やがて網膜剥離が起こり、適切な処置をしないと視力を失うことになるのです。
 糖尿病性網膜症の多くは網膜出血の存在によって発見されますが、初期の場合、あるいは出血している場所によっては自覚症状が全くありません。視野の中央部が見えにくい、あるいは突然かすんで見える等の症状で気がつかれる場合がありますが、その時にはかなり進行した状態と言って良いと思います。
 糖尿病性網膜症の治療は、前述のように内科的治療と並行して行われる必要がありますが、眼科的治療で初めに行われるのは「網膜光凝固」という治療です。これは特定の波長を持ったレーザー光線で網膜の血液循環の低下した部位を、新生血管が出来る前に凝固(わざと組織を破壊)して、出血による増殖膜の発生を食い止めたり、既に出血してしまった血液の吸収を促すという治療です。網膜光凝固は外来で出来る治療ですが、網膜症進行のどのタイミングで行うかが後の視力維持に大きく関わってきます。
 網膜光凝固によっても進行が食い止められず、増殖膜による網膜剥離の危険が迫っていたり、あるいは既に網膜剥離が起こってしまっている場合は、早急な手術が必要となります。網膜症に対する手術は「網膜硝子体手術」と呼ばれ、数ある眼科手術の中でも極めて専門性の高い高度技術を要する手術で、この手術に対応可能な医療機関も限られてしまいます。
 糖尿病性網膜症と共に起こる「糖尿病性黄斑症」という特別な合併症があります。
 糖尿病性黄斑症は、網膜の「黄斑」という、視力にとって最も大切な部位に起こる糖尿病合併症で、新生血管から漏れ出てくる血液の成分によるむくみ(浮腫)が主な原因です。
 黄斑部のわずかな変化は視力に重大な影響を及ぼすため、早期治療が大切です。この黄斑浮腫に対する治療は、浮腫の原因となっている新生血管を直接叩く作用のある抗VEGF剤を、直接眼球内に投与する方法が主流となっています。
 特に糖尿病治療が専門でない内科の先生であっても糖尿病性網膜症の重大さをよくご存知ですので、定期的な眼科受診をお勧めになると思いますが、患者さん自身もこの合併症のことを忘れずに、ご自分で眼科受診をするようにして下さい。また、先に述べたように初期には全く自覚症状がありませんので、糖尿病と診断されたら、あるいは健診で疑われた時には積極的に眼底検査を受けることをお勧め致します。
 来る11月25日(土)に開催される「地域の医療を考える集い」のテーマは、「糖尿病の治療~怖い合併症とその予防~」です。当日は眼の合併症についてもお話しする予定ですので、是非ご参集下さい。
(北秋田市 平成29年11月17日掲載)
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