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糖尿病(5) ―糖尿病と認知症―㊥

秋田労災病院 糖尿病・代謝内科 

八代 均


5.認知症の検査
1)神経心理学的検査
 スクリーニング検査としてミニメンタルステート検査(MMSE)と改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS―R)がある。見当識、言葉の記銘、計算、遅延再生、物品呼称、即時記憶、口答指示、読解、構成、視空間認知、逆唱、物品再生および言葉の流暢性について評価する。いずれも30点満点で、MMSEが27点以上で正常、22~26点で軽度認知症の疑い、21点以下で認知症の疑いと評価する。HDS―Rが21点以上で正常、20点以下で軽度認知症の疑い、11点~9点で中等度認知症の疑い、10点以下で高度認知症の疑いと評価する。その他に時計描画試験がある。
2)画像検査
 CT、MRI、SPECTおよびPETがある。CTおよびMRIで大脳の萎縮、特に海馬の萎縮度、脳室拡大、脳梗塞あるいは脳出血後の所見がないかを観察する。SPECTで脳の血流を評価する。アミロイドPETは脳内のアミロイド蓄積を評価するもので、可能な施設は限られ秋田県内で現在のところない。またMRIによるVSRAD(advance)があり、早期アルツハイマー病診断のためのソフトである。アルツハイマー病では記憶に関係する海馬が萎縮する。VSRADはMRI画像を利用し、海馬の萎縮度を数値化して正常脳と比較したものである。
6.認知症の診療と診断
 本人または家族による物忘れの訴えがあり外来受診となったら、問診および診察を行い、認知症以外の疾患がないかどうかを判断する。認知症が疑われたならMMSEとHDS―R検査を行い、異常値を示したならCT、MRIおよびVSRADを行い、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭葉型認知症(ピック病を含む)あるいはその他の認知症の鑑別を行う。MRIによるVSRADに新しい解析ソフトAdvance2があり、アルツハイマー病とレビー小体型認知症の鑑別の支援となる。
7.認知症の治療
1)アルツハイマー病の治療
 ①中核症状の薬物治療 治療薬に、現在ドネペジル(アリセプト)、ガランタミン(レミニール)、リバスチグミン(リバスタッチパッチ)およびメマンチン(メマリー)の4種類がある。ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンは同系統の薬剤であるから併用することはないが、メマンチンとの併用が可能である。パッチ製剤は皮膚に貼付することにより薬物が皮膚から吸収され効果が発揮される。薬物を服用できないあるいは服薬拒否する患者に有用である。いずれも少量から開始し、副作用と効果を確認し増量してゆく。
②行動・心理症状(周辺症状)の治療 症状により対症的に安定剤や抗うつ剤などを使用する。漢方薬の抑肝散が有効な患者がいてよく使用している。
2)脳血管性認知症の治療
血糖コントロールの改善、低血糖の予防、血圧の管理、脳梗塞(小梗塞、ラクナ梗塞)の予防目的で抗血小板薬あるいは抗凝固薬の服用、禁煙をすることなどである。
3)糖尿病関連薬の期待
インスリン抵抗性が認知症発症に関わることからインスリン抵抗性改善薬のピオグリタゾン(アクトス)が有効であった報告がある。最近鼻腔内へインスリン注入すると短時間で脳内へ移行することにより認知機能の改善効果が確認されている。しかし、まだ研究の段階で日常診療において行われていない。
(大館市 平成28年12月9日掲載)
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