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ちょっと便利な漢方薬(6)

佐々木小児科医院 院長
佐々木静一郎

1 かぜ関連の漢方治療(平成24年6月8日と、同6月15日の2回にわたって本紙に掲載済み)

2 片頭痛の漢方治療(平成24年10月5日に、同じく掲載済み)

3 腹痛の漢方治療(平成24年10月12日に、同じく掲載済み)

4 インフルエンザの漢方治療(平成25年2月1日に、同じく掲載済み)

5 「かぜをひきやすい子、ぜいぜいする子」の漢方薬による体質強化(平成25年2月1日に、同じく掲載済み)

6 皮膚関連疾患の漢方治療(平成25年7月12日に、同じく掲載済み)

7 女性の漢方治療(平成26年1月17日と、同1月24日の2回にわたって、同じく掲載済み)
 
8 精神疾患の漢方治療
 [第1例]26歳、男性
 初診:××年××月××日。初診の前年に大きな都市の大学卒で、ほかの都市のIT関連会社に就職した。営業の仕事で、すこし慣れてきたが、時に動悸や過呼吸がある。朝起きてから嘔気、動悸があって、夜は深く眠れないということで、某神経クリニックで「適応障害」の診断で、いろいろの薬を4種類出されていた。それで止むなく休職し、実家に帰ってきていた。当院の診断も“適応障害”で、これまでの薬を全部止めてもらって、漢方の柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)を7日分処方した。

 初診の8日後には、よく眠れて、食欲も出てきた。生来体力には自信があって、色が浅黒いほうなので、今度は処方を柴胡清肝湯(さいこせいかんとう)にかえた。この漢方薬は効果的で、日中あんまり考え込まなくて、体調も気分もよいそうだ。初診の40日後に来院したときには、柴胡清肝湯をのむと前医のくすり(睡眠導入剤、抗うつ剤など4種)と同等の効果があるが、ただ入眠がうまくない。眠ってしまえば問題ないそうだ。

 これまでは完全に夜型の生活で、起床は午前10~11時、就寝するのは次の日の午前1時で、4~5時ころになって入眠するそうだ。3日に1度、親の買い物について外に出る程度なので、まずは「生活を規則正しくする」ことにした。そしてそのように生活を調整して2週間後には、体調よく、顔の表情もよい。生活が規則的になってきて、毎日戸外に出ている。柴胡清肝湯+レンドルミン(睡眠導入剤)を服用している。生活にリズムが出てきたので、「眠れそうなときは、レンドルミンを抜いてみては?」と提案してみた。

 初診から3カ月後、とても元気よい、気分よい体調よい。日常生活は規則的になり、顔の表情がとてもよい。レンドルミンは、本当に眠れないとき週1回くらいだけ飲んでいる。そのようにして1カ月半後(初診から4カ月半後)に両親の来訪があった。「○○の方面にある会社に、行き始めた」と、にこにこしながら嬉しそうに、報告に来てくれたのだった。
 
 [第2例]24歳、女性
 初診:××年××月××日。初潮11歳、月経困難症ない。主訴:「アトピー体質の方を何とかしてほしい」
 経過:22歳のとき第1子産んで、母乳で育てた。出産後11カ月で月経再開したので、母乳止めた。

 この第1子の妊娠中、顔に発疹出て、皮膚科で診てもらって「アトピー」といわれた。それが未だ治らないでいるので、気になっている。ところが、お話を聞いていると、ほんとうの悩みは別のところにあった。

 さて、この子を産んで月経が再開したが、その月経の期間中、体がだるくなって、気持ちが落ち込む。生理が終われば、なんともなくなるそうだ。ところで次の第2子の出産は、第1子出産の2年1カ月後だった。その第2子の出産から今日まで5カ月たつが、月経がまだ来ていない。前回のことがあるので、今度も月経が再開すれば、また体調不良になるのではないかと心配になっているそうだ。

 診断は①“産後神経症”、②“顔面湿疹”として、治療の方は①には漢方薬の当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を7日分、②には西洋薬の弱い軟膏を処方した。1週間後にやって来て、体がすっきりしてきた、体調がよいと。目覚めもよく、便通もよい。顔の方は、肌がよくなって、発疹が出なくなったと言っていた。月経の方は、第1子のときは10カ月できたが、今度のは5カ月たったが未だだと。その後外来にきて、1年ぶりにやっと来た。量が多く、少しクラーっとしたがと言いながら、それでも安心した様子だった。
 
 [第3例]40歳、女性
 初診:××年××月××日。36歳のとき第1子出産、40歳で第2子出産。
 初診の時は第2子出産後10カ月であった。その後ずっと体調がよくて、現在は育児休暇中である。

 出産後8カ月になって体がだるい。9カ月になって少し遠方の町であったコンサートへ出かけたが、途中で疲れてしまって、翌日から体がだるくて朝起きられず、嘔気や頭痛などがでて、いらいらして周りに当たり散らすようになった。そのとき、インターネットを見て、「産後うつ」かと思ったそうだ。当時の一番の苦しさは、①いらいらすること、②咽のど)の詰まった感じ、③胸がしめつけられるような感じ、などであった。
“産後うつ”の診断で、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)14日分を処方した。2週間後に外来に来て、顔の表情が明るくなっていた。上記の薬をのんだら、いらいら、咽のつまった感じがとれたそうだ。そこで同薬をさらに14日分処方した。

 ところが2カ月後にまた来て、以前あったような咽の症状がまた出てきたという。1人目産んで、そのあと今回の第2子を妊娠するまでしばらくのあいだ月経なく、排卵誘発剤をのんで妊娠したというようなことであった。今度は加味逍遥散(かみしょうようさん)を14日分出した。これでかなりよいが、それでもまだ咽の違和感が気になるというので、次に桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)に変えて、14日分処方した。

 このようにして治療を続けていたところ、3カ月後の夕方に、急に悪寒して38・8度Cに発熱した。ところがこの状態は、なにも服薬もしないのに、翌朝、自然に解熱してよくなってしまった。咽のあたりが、じりじり(圧迫感かと)する。この症状が5日間くらい続いたあと、自然にそれらの症状がよくなり、その後も全く体に異常が見られない。これは瞑眩(めんげん)だと解釈してもよいかと思う。そのあと以前とは段違いに体調がよくて、いらいらしないし、気分もよいそうだ。本人の言うには、できればもう少し元気になればとの希望があったので、最後の仕上げに、桂枝加竜骨牡蠣湯と、六君子湯(りっくんしとう)(2・5gを毎夕食前服用)を14日分を処方した。この両者を合方(ごうほう)(併用すること)して、とても体調よくて、外出するようになった。

 その後服薬を柴胡加竜骨牡蠣湯に変えたりしたが、心身ともに殆ど満足できる状態になって、初診時から7カ月で終診となった。

註:瞑眩とは、漢方薬の服用によって一過性に異常な反応が出たあと、急速にその病気が改善するか、治ってしまうことをいう。
(大館市 平成26年9月19日掲載)
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