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人間ドックの「新基準案」での混乱

奈良医院 院長
奈良正人

 先頃日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が、人間ドックで検査を受けた人達のデーターをもとに血圧やコレステロールなどの新しい基準案を公表しました。しかし、新基準案は中間報告されたものであり、今すぐに判定基準が変更されると言うのではなく、公表された数値の根拠を見ると、注意しなければならないことがたくさんあります。

 血圧については、最高血圧が129以下、最低血圧は84以下だと「異常なし」と判定されていましたが、新基準案では最高血圧が88~147、最低血圧が51~94となっています。日本高血圧学会では最高血圧が140以上、最低血圧が90以上を高血圧として、医師の診察を勧めています。

 動脈硬化の危険因子である悪玉コレステロール(LDL―コレステロール)は現在男女とも異常なしとされる数値は60~119であり、日本動脈硬化学会でも140以上を生活習慣の改善が必要な目安としています。ただ性別、年齢、糖尿病、低HDLコレステロール血症、喫煙や冠動脈疾患の有無等で更に低めにコントロール目標をおき、脳卒中や心筋梗塞予防を目指した治療をすべきとしています。しかし、今回の新基準案では男性では72~178、女性では30~44歳が61~152、45~64歳が73~183、65~80歳が84~190となって上限の数値が大幅に上がっています。

 これらの、数値の大もとになったのは、平成23年に全国の人間ドック200施設で検査を受けた、約150万人のデーターです。そのうち、持病が無く薬を服用していない、喫煙していない、一日の飲酒量が日本酒換算で1合未満などの条件を満たし、更に検査値の特に高い人や低い人をカットして絞り込んだ約1万人の「超健康人」のデーターから導き出した数値を中間報告として公表したということでした。これを一部新聞やテレビで健診での評価が変わるとか、この程度の数値でも健康でいられるのに薬剤投与を受けているのは無駄な治療をしているかのような報道がなされ、混乱を招いてしまいました。

 これに対し、日本医師会、日本高血圧学会、日本動脈硬化学会等では厳重な抗議をし、人間ドック学会がお詫びしたということがありました。それは各種学会では長年の研究データーから、治療目標を決めているのに、今回の人間ドック学会の基準案のもととなった「超健康人」がこのままで5年後、10年後も健康のままでいられるのか等、まったく検証していないまま基準案として数値を出してしまったからで、臨床現場の医師達も患者さんも大変迷惑しております。全国的には歪められたマスコミ報道を信じて治療を中断した例もあったと聞いております。気の毒に感じると共に怒りさえ覚えます。

 大館北秋田医師会では週刊誌レベルの医学情報でなく、正しく役に立つ医学情報を本紙と通じて今後とも発信してまいりますし、医療や健康面での不安が有る時はいつでも「かかりつけ医」にご相談下さい。
(北秋田市 平成26年8月1日掲載)
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