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ヒートショック~冬のお風呂場は危険です~

佐々木内科医院 院長
佐々木隆幸

 警察医(一人暮らしで亡くなられた方などの確認に立ち会う医師)をさせていただくようになって正直驚いたのは、冬にお風呂場で倒れる方の多さです。ほとんどニュースにはならないので知られていませんが、ある報告では2011年には約1万7000人もの人々が入浴中急死をしたとみられ、これは交通事故による死者数を大きく上回ります。特に外気温が低くなる12月から1月にかけて、もっとも少ない8月のおよそ11倍に急増するともいわれます。

 自宅での入浴中は勿論、温泉や宿泊施設でもあり得ます。私もかつて温泉施設で、目の前で具合が悪くなり救急車で運ばれた方を見たことがあります。「健康ランド」なのに、と皮肉に思いました。

 この原因として「ヒートショック」という言葉が使われるようになりました。居間には暖房がありますが、脱衣所は寒いことも多く、そこで裸になり熱い浴槽に入る。この急激な温度変化が短時間に起こり、血圧が急に上昇したり下降したりします。それが引き金になって脳梗塞や脳出血、失神による溺水、心筋梗塞や危険な不整脈を起こして、冬の入浴中の突然死の原因になるのです。命取りにならずとも、めまいや立ちくらみで転んで怪我をする原因にもなります。

 高齢の方や、高血圧、心臓病など、動脈硬化の進んでいる方が特に危険ですが、健康な方も油断はできません。お酒を飲んで酔った状態で具合が悪くなることも多いのです。

 雪国は熱いお風呂が好きな方が多い。雪かきもそうですが、冬の入浴というのがかなり身体に負担のかかる重労働だと思っている方は少ないのです。

 危険な要素は、高齢者、高血圧・心臓病などの持病、肥満、部屋の温度差が大きい、熱い風呂が好き、飲酒後の入浴、などです。

 では、対策しましょう。①脱衣所を暖めておく、②浴槽のふたを開けたり浴室の壁や床に温かいシャワーをかけたりして浴室を暖めておく、③湯船に入る前に手足の末端からかけ湯をする、④いきなり肩までお湯につからない、⑤入浴時間は長すぎず短かすぎず、⑥湯船から出るときはゆっくりと立ち上がる、⑦飲酒後の入浴は避ける、⑧入浴の前・後にコップ一杯の水分を補給する、⑨なるべく一人の時には入浴しない、などです。

 忘れてならない大事なことは、このようなお年寄りと同居されているご家族も、入浴中に様子を見にいったり、声かけをしたりすることです。ちょっとした気遣いで重大な事故を防ぐことができます。皆様が安心安全に健やかに冬を過ごされ、警察医が呼ばれる回数が減ることになれば幸いです。
(大館市 平成26年12月19日掲載)
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