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糖尿病(3)―糖尿病腎症からの透析予防とは―

 
秋田労災病院
糖尿病・代謝内科 八代 均

 糖尿病腎症は糖尿病細小血管障害の一つである。高血糖で腎障害を引き起こし最終的に腎不全(尿毒症)となり人工腎臓による血液透析が必要となる。日本における糖尿病腎症による透析療法の現状は、糖尿病腎症で透析療法中の患者数が平成25年に115,118人で透析患者数全体の37.6%であり、平成23年から原因疾患で一番多くなっている。糖尿病腎症により新規に透析を導入した患者数は平成25年に15,837人(新規導入の43.8%)でようやく減少傾向を示してきた。それでも糖尿病腎症が平成11年から新規透析導入原因疾患の第1位である。

1.血液透析となると何が大変か
血液を大量に取り出すため上腕に動静脈シャント手術を行わなければならない。血液透析を週2~3回、1回に3~4時間必要である。2~3日以上の旅行あるいは出張時に当地での血液透析を予約しなければならない。さらに公費であるが年間約500万円の医療費がかかる。網膜症や神経障害などの他の糖尿病合併症があることが多く、また透析していると動脈硬化が進行しやすいなどの問題点がある。

2.糖尿病腎症の診断と病期分類
糖尿病腎症では腎糸球体が障害する。腎糸球体は血液濾過により尿を作ることから、初期に尿蛋白が出現し、腎症の進行とともに蛋白量が増加する。糖尿病腎症の病期分類は尿蛋白のほとんどがアルブミンであることから尿中アルブミン排泄量と腎機能により表の通り第1期から第5期まで分類されている。
糖尿病腎症の病期診断は、外来受診時に採尿し尿中アルブミンとクレアチニン濃度を測定し計算したのが微量アルブミン指数である。第1期(腎症前期)が正常値の30mg/gCr未満、第2期(早期腎症)が30~299mg/gCr、第3期(顕性腎症)が300mg/gCr以上である。第3期以上の診断は、血中クレアチニンを測定し、年齢と性からeGFR(推算糸球体濾過量)計算し行う。第3期は尿中アルブミンあるいは尿蛋白が大量であってもeGFRが30ml/min以上である。第4期(腎不全期)は尿アルブミンあるいは尿蛋白に関係なくeGFRが30ml/min未満である。透析療法となると第5期である。

3.糖尿病腎症の治療
糖尿病腎症の治療は、血糖コントロールを良好にする、血圧の管理、食事療法、運動療法および禁煙である(表)。

1)血糖コントロール
腎症予防あるいは進行防止目的でヘモグロビンA1cを7.0%未満とする。空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間血糖値を180mg/dLを目標とする。

2)血圧の管理
糖尿病腎症では血圧が重要である(一口メモ)。病院での血圧と家庭での血圧が違うことがある。家庭血圧を朝と夕の2回上腕で測定する。朝は起床後1時間以内、食事を摂る前、薬を飲む前に1~2分間安静後に測定する。寝る前に1~2分安静後に測定する。理想的には2回測定しその平均値とする。目標は病院血圧が130/80mmHg未満、家庭血圧が125/75mmHg未満である。

3)食事療法
①食事から蛋白質摂取量の制限
食事に含まれる蛋白質が腎症を悪化させることから蛋白質摂取量の制限が必要である。糖尿病食から蛋白質を20~30g減らした糖尿病腎症食(糖腎食)へ切り替え、食品交換表も「糖尿病性腎症のための食品交換表」(第2版)へ切り替える。秋田労災病院では食品交換表を基に糖尿病腎症食1840Kcal(蛋白質50g)、1600Kcal(蛋白質50gと40g)および1440Kcal(蛋白質40g)の4食種を設定してある。「糖尿病性腎症のための食品交換表」は蛋白質の多く含まれている主食類の表1および肉・魚・豆製品類の表3を蛋白質含有量から表1をABCに、表3をABCDに分類してある。糖尿病腎症の食事療法のポイントは、蛋白質の摂取量を守る、摂取エネルギー量を守る、塩分の摂取量を制限する、カリウムおよびリンの摂取量に気をつけるなどである。主食のご飯に蛋白質が含まれている。蛋白質の含有量を1/3~1/2に調整したお米、「春陽」がインターネットで購入することが可能である。

②塩分摂取量の制限
血圧を管理するために塩分摂取量を制限し、1日6g未満とする。1日の塩分摂取量は随時尿でナトリウムとクレアチニンを測定し計算することができる。塩分制限は薄味に慣れることであり、表を基に塩分摂取量を減らすようにする。

5)糖尿病腎症の運動療法
運動により腎機能を悪化させることがある。第2期は特に制限がない。第3期前半は通常の軽い運動療法が可能であるが、過激な運動をさけるようにする。第3期後半から第4期になると運動療法がさらに制限され、散歩やラジオ体操などで体力維持程度に行うようにする。

6)禁煙
喫煙が腎症を進行させることから禁煙をする。

4.進行性腎症(第5期)の治療
 腎不全となると、腎移植、血液透析あるいは腹膜透析が必要となる。血液透析は人工腎臓が必要なことから病院で透析を行うが、腹膜透析は自宅でも可能である。

5.糖尿病腎症からの透析予防指導とは
 平成24年度の診療報酬改定で「糖尿病透析予防指導管理料」が新設され、医師、栄養士および看護師が糖尿病患者に透析予防目的で指導を行うと保険算定することができる。算定要件は表の通りであるが、施設基準に糖尿病教室等を実施していることが規定されている。つまり、糖尿病透析予防指導は、糖尿病患者指導の一環として行うものでそれ単独のものではない。秋田労災病院は定期的に外来糖尿病教室を行いその一環として糖尿病透析予防指導を行い、月平均約5人位となっている。大変効果的で腎症の進展予防および透析の先送りあるいは回避が可能となっている。

6.秋田労災病院における透析予防指導の流れ
 医師、栄養士および看護師による指導を順番に行うが、状況により栄養士が先に行うことがある。

1)医師による指導
 外来診察中に独自に作成した8ページに亘る右のプリントを基に、糖尿病合併症としての腎症、透析となったときの問題点、透析予防のための治療法、腎症の食事療法の要点および運動療法の注意点を約15分位かけて指導している。血糖コントロール、血圧の管理および食事療法により腎機能悪化の進行を抑制し最終的に透析の先送りあるいは回避するのが目的であり、患者本人の努力により実現すること可能であることを説明している。

2)栄養士による指導
 木村節子管理栄養士が指導を担当している。糖尿病腎症の食事療法の基本として、必要エネルギーの充分摂取、蛋白質摂取量の制限、塩分制限、腎不全となるとカリウムとリンの制限の必要性を指導している。主治医から指示された摂取エネルギー量および蛋白摂取量から、「糖尿病性腎症のための食品交換表」(第2版)を基に腎症の食事療法、献立の立て方および具体的な献立を提示している。「糖尿病治療のための食品交換表」(第7版)による食事療法との違いについて混乱を来さないように解説している。食品交換表で蛋白質を多く含むのが表1および表3で特に表3(肉魚大豆製品類)の制限を指導している。腎症の有無に関係なく食事療法が糖尿病治療の基本であることから、1日の食事摂取量、主食・主菜の変化、秤の利用、薄味が基本の味付け、和食・洋食・中華について、栄養素のバランスの取れた献立を指導している。

3)看護師による指導
 加藤奈緒美看護師(保健師)が指導を担当している。ステージ指導、血糖管理指導、血圧管理指導、生活指導および体重管理指導の項目があり、その中から主治医が患者に必要と指示した項目を指導している。ステージ指導は診断された自分の腎症の病期を理解してもらうため既成のパンフレットによる指導である。血糖管理指導は腎症の進行を予防するためにヘモグロビンA1cの目標を7%未満とすること、目標を達成していない患者の問題点について改善策を指摘している。また、血糖自己測定を行っている患者には機器の正しい使用法の指導を行っている。血圧管理指導は腎症における血圧の重要性、家庭血圧の正しい測定法および血圧自己管理手帳への記載方法などである。目標値は病院血圧130/80mmHg、家庭血圧125/75mmHgである。生活指導は、患者の生活スタイルを把握しながら腎症治療の問題点の解決策を一緒に考えている。また、運動療法の注意点、塩分制限および禁煙の勧めを行っている。体重管理指導は身長を基に標準(目標)体重を計算し提示している。

6.最後に
 不摂生、治療の遅れあるいは主治医からの処方薬を適切に服用しなかったことにより腎症が進行し透析の危険性となることがある。糖尿病透析予防指導は、そのようになったことに対しての反省あるいは懺悔させることが目的でない。いかに透析を遅らせあるいは回避することにより現在の生活を維持するかである。主治医、栄養士および看護師のスタッフが一丸となり指導し患者に希望を与えるためのものである。
次回糖尿病(4):糖尿病と閉塞性動脈硬化症
(大館市 平成27年9月25日掲載)
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