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こどもが病気になったら~上手な病院のかかり方~

北秋田市民病院小児科 野口博生


 今年も11月28日午後2時から大館市立中央公民館で「地域の医療を考える集い」が開催されます。テーマは「今日の小児医療を取り巻く問題~子と孫にすこやかで安心な環境を~」となりました。講師と演題は、梅内小児科から「予防接種について」、大館市立総合病院から「食物アレルギー」、私が「上手な病院のかかりかた」、まきなえクリニックから「病児保育の現状」についてです。生まれたばかりの赤ちゃんから学校に上がる前の、子供やお孫さんに接するときに役立つ内容にしたいと準備をしています。どうぞお出で下さい。
さて、当日の私の話のさわりを書きたいと思います。

 皆さんは中学生の時に新聞記事の書き方の授業で5W1Hというのを習いませんでしたか? ①いつ②どこで③だれが④なにを⑤なぜ⑥どんなふうに、と情報を整理すると相手にわかりやすくよく伝わるというものです。「①昨日の午後に②保育園で③うちの娘が④38・9度の発熱があったので早退した。⑥3日前から鼻水が出ていて、昨日は夜中も咳が3、4回続いて白っぽい痰が出たので寝つきづらかった。⑤インフルエンザもはやっているし、心配している」といった感じです。

 診察の時にこんなに順序立てて話すことなんか、中々できませんよね。特にお孫さんを預けられて受診したおじいさんおばあさんが、「外孫だからよくわからないが、今朝、娘が『熱が出たので代わりに病院に連れていってちょうだい』と、おいて行かれた」と嘆かれている時があります。そういう時には「次には簡単でいいから親御さんにお手紙を書いてもらってください。」とお願いしています。口で言うのは難しいですが、短い文章でも書くことで大切な情報が得られます。なにより「座薬もください」などの「一番心配なこと」がはっきりします。

 「病院のかかり方」でも5W1Hは役に立ちます。よくある「熱があるとき」で考えます。①のいつですが、熱があったらいつ医者に行くの?「今でしょ!」とあわてるのは子供が小さくて初めての熱だったりすると不安なものです。「こどもがぐずるので触ると熱かった。」や「保育園から呼び出された。」など気が付くきっかけはいろいろだと思います。「インフルエンザもはやっているし」とか「明日は大事な用事があって休めない!」いろいろと気がかりなこともあるものです。「保育園から39・7度の熱が出たと電話があった」のは病気の深刻度とはあまり関係がありません。まずは自分の目で子供さんを観察してみましょう。寒気がして震えていたり、嘔吐や息遣いが荒い、不機嫌でずっと泣いているなどは重病の可能性があります。そうでなければ冷やしたり、手持の座薬などの熱さましを使って日中に受診することで「コンビニ受診」を避けることができます。

 ②のどこに行くか、そして③誰に診てもらうのかです。近くの医院、近くの病院、あるいは遠くの大病院やテレビで広告をしていたり定期的に医療関係の番組に出演しているお医者さんもいます。おじいさんが自分の血圧の薬をもらうついでに赤ちゃんを内科の先生に連れていって、先生を困らせている時があります。医師は年齢を問わず、専門外でも診察することが求められます。小児科の私でも当直の時には指や頭の切り傷を縫ったり、心臓マッサージを行ったりします。一方で10年程度のキャリアがあれば、何かしらの専門医を持っています。小児科専門医であれば年間に数十回の子供の病気に関する講演会に出席して資格を更新しています。内科の先生も内科専門医を、耳鼻科や皮膚科の先生もそれぞれの専門医を継続するためにたくさんの研修に参加しています。医療の技術や知識はどんどん変わっています。どこのお医者さんも自分の興味がある分野はよく勉強していますが、その他についてはかたよりが出るのはいたしかたない処です。しかし小児科医は同時に子供の総合医です。発熱はもちろん鼻水や咳、嘔吐や下痢、皮膚炎や言葉や成長の遅れ、予防接種やいじめの相談、子供に関することはすべて勉強を続けているのが小児科医です。

 こんな病院を使い分けるTPOをお話ししたいと思っています。それではお大事に。
(北秋田市 平成27年11月20日掲載)
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