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成人喘息の最近の考え方と治療

常盤医院 鈴木あや子


 【ぜんそく】は、空気の通り道である気管支が炎症を起こす病気です。近年、有症率は国内外ともに増加傾向にあり、吸入アレルゲン、生活様式の変化(家屋の気密性、食生活)、大気汚染(ディーゼル車の排気ガス中粒子など)、遺伝的素因などが増加原因と考えられています。【ぜんそく】という病気は様々な程度と様相(人の表情にたとえられます)で一面的、単一な病態ではなく複雑な特徴とその表現型からの分類がこころみられています。最近では特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併する喘息が話題となっています
 【病態】1990年代以後〈気道の慢性炎症・火事やボヤに例えられる〉によって種々の化学伝達物質が産生されて、気道粘膜に好酸球を主体とした炎症細胞が増加した結果、気道粘膜が過敏に反応する状態が作られると解明されました。
 未治療の状態が続くことで気道炎症(火事のボヤ)による障害から気道構造の変化(リモデリング)が起こり気道が硬く狭くなり元に戻らなくなる。
 種々の因子で増悪することがある(ボヤが大火事になり発作を起こす)↓喘息発症・増悪のメカニズム図
 【症状】呼吸をするときに、〝ゼーゼー〟〝ヒューヒュー〟といぜんった苦しそうな音(〝喘め鳴い〟と呼ばれる)がすることが発作的におきる。咳、胸部圧迫感も伴うも発作時以外は症状はなし。
 夜間、早朝に出現することが多い。
 発作時には聴診で、吸気、呼気で独特な音が聞かれる。
 【検査】典型的な発作の場合は診断は比較的難しくはないが、日中の診察で非発作時、治療抵抗性の場合は詳細な問診が重要となります。
 胸部写真で異常がないことが確認された上で、肺機能検査(スパイロメトリー)で異常の有無を知り、気道が気管支拡張剤で有効に広がるかどうかが診断根拠となる。
 アレルゲン検査(血液、皮内テスト)でアトピー型か非アトピー型に分かれる。
 気道炎症の存在として喀痰中の好酸球増加、呼気NO増加が重要、専門的検査では気道過敏性検査、強制オシレーション法(モストグラフ)などがある。
 特に注意するのは他疾患の鑑別・合併症(特に心不全―喘息と同じように咳、喘鳴、呼吸苦など似た症状)の診断。
 【治療法】長期管理には症状を目安に重症度(4段階)に応じて段階的に薬を決定基本は病態本体である気道炎症に対して吸入ステロイド(ICS)が必須、特に喘息の慢性化、リモデリングなどによる難治化を防ぐことを期待して早期に治療介入することが重要↓常におこっているボヤを消して症状進行を抑える。
 その他、気管支拡張剤、抗アレルギー剤各種を種々組み合わせて長期管理薬(コントローラー)とし発作時使用薬(リリーバー)と分けて使う。
 ダニアレルゲン減感作療法、ほかに難治性の場合に使用される抗体製剤(高価であるが適応あれば有効性が高い)。
 気管支熱形成術(気管支サーモプラスティ、2015年~保険適応)があるが、実施施設が限定的。
 【吸入治療の特殊性】内服薬と異なり吸入薬は正しく吸入されて初めて薬効を発揮するが、沢山のデバイスから各個々人に合ったものを選び、正しい吸入手技を習得するまで練習してもらうことが重要。
 【管理目標】Ⅰ症状のコントロール(発作や喘息症状がない状態を保つ)
 ①気道炎症の制御
 ②正常な呼吸機能を保つ(ピークフロー―肺機能自己測定管理法―が予測値の80%以上かつ日内変動が10%未満)
 Ⅱ将来のリスクの回避
 ①呼吸機能の経年低下を抑制する
 ②喘息死の回避
 ③治療薬の副作用発現を回避する
 【増悪因子の予防】1度でも憎悪を起こすと再び増悪しやすいので危険因子や合併症対策が必要
 (1)過去の病歴
 (2)現在のコントロール状態
 (3)治療薬が不十分
 (4)環境因子(アレルゲン、大気汚染)
 (5)食品・食品添加物
 (6)妊娠(遺伝因子
 (7)併存症:肥満、鼻炎・副鼻腔炎、食物アレルギー、喫煙、胃食道逆流症、精神的&社会経済的問題
 現状の問題は、喘息治療は苦しい時のみ治療をするという方がまだ多いということ、また症状に対しての自己評価と客観的評価に乖離があるため、不十分な治療のまま発作時のみの治療を繰り返すことによって気道がリモデリングを呈した状態で老年期に至り、低肺機能状態で過ごさざるを得なくなることです。
 患者さんとのパートナーシップのもとに問題点を見つけながらより良き治療継続できることを願っています。
 10月13日午後2時から4時に大館市中央公民館で開催される「地域の医療を考える集い」では「アレルギーにまつわる病気」というテーマで、3名の医師がそれぞれの立場で講演します。ぜひ、会場へ足をお運びください。
(大館市 平成30年9月28日掲載)

 

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