本文へ移動

ちょっと便利な漢方薬5・㊤

佐々木小児科医院 院長
佐々木静一郎

1 かぜ関連の漢方治療(平成24年6月8日と、同6月15日の2回にわたって本紙に掲載済み)

2 片頭痛の漢方治療(平成24年10月5日に、同じく掲載済み)

3 腹痛の漢方治療(平成24年10月12日に、同じく掲載済み)

4 インフルエンザの漢方治療(平成25年2月1日に、同じく掲載済み)

5 「かぜをひきやすい子、ぜいぜいする子」の漢方薬による体質強化(平成25年2月1日に、同じく掲載済み)

6 皮膚関連疾患の漢方治療(平成25年7月12日に、同じく掲載済み)

◇ ◇
7 女性の漢方治療

 女性と漢方薬は切っても切れないほど密接な関係がある。ことに女性三大処方といわれる当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、加味(かみ)逍遥散(しょうようさん)と桂枝(けいし)茯苓丸(ぶくりょうがん)の三つは使用頻度が高い。

 それでは例によって症例を挙げて、簡単な説明を加えてゆく。
 
 〔第1例〕35歳、女性
 この患者さんは、①足の指先が冷たくて、しびれる、②以前からニキビが年中でている、というのでやって来た。よく聞いてみると、子供のときから“全身性エリテマトーデス”の診断で、ずっと治療をうけている。また冬は勿論のこと、夏でも涼しいときは、足の指先が冷たくなってしびれて、寒いときは黒っぽくなる。

 初診のとき(XX年7月)から当帰四逆加(とうきしぎゃくか)呉茱萸(ごしゅゆ)生姜湯(しょうきょうとう)を飲んでもらったら、1か月半くらいあとには、足が温かくなってしびれもとれて、足指が黒ずんで来なくなった。状態が良くなってきたので、もう少し体力をつけて、寒くなってくる10月いっぱい服薬して、よければ終薬にする予定にしていた。ところが9月になって天気が悪いとき、頭が重くて、頭痛がするという。でもこれは、4年前からあったことだという。お腹を診ると腹直筋が緊張しているので小建中湯(しょうけんちゅうとう)に変えたら、とても飲みやすいそうだ。飲みやすいということは、その人に合っているということだ。

 そこでこの小建中湯をのんでいても冷えの方も問題なければ、先の当帰四逆加呉茱萸生姜湯と小建中湯の何れかにすることにしていた。

 翌年2月、かぜひいて喘息が出て来て、マイコプラズマ肺炎にもかかった。その翌月に、アレルギー性鼻炎もあったので、柴朴湯(さいぼくとう)→小青竜湯(しょうせいりゅうとう)+フルナーゼ(これは他院から出ている)にした。

 このようにして足指の冷えと…しびれは治った。頭痛も訴えなくなった。だがそのあと喘息、マイコプラズマ肺炎、アレルギー性鼻炎と、つぎつぎに病気が増えて来た。また初診のときからニキビの方の訴えも強かったが、漢方薬を何種類も併用すると効きが悪くなるので、冷えが治ってからニキビの方に取りかかる約束をしていたのだが、そのあと来院しなくなった。
 
 〔第2例〕26歳、女性
 「月経が来る前になると、体がだるくなり、頭痛・吐き気がつよくなって、やる気がなくなる、また少しのことで泣きたくなる」との訴えでやって来た。

 ある婦人科で〈月経前緊張症〉と言われてピルを飲んだが、よくなくて中止している。

 初経12歳、月経は1週間続いて、初めの2~3日は量が多い。冷え症で、年中手足が冷たい。そこで当帰芍薬(とうきしゃくやく)散(さん)を服薬し始めると、悪心・だるさが取れ、その他に頭痛や肩こりも大分よい。また便秘があって5~6日排便がなかったが、最近は3日に1度くらいになった。でも便が固くて肛門が切れる。

 また月経のとき下腹部痛と頭痛があって、気持ちが落ち込む。そこで便秘と月経痛の両方によいようにと桃核承気湯(とうかくじょうきとう)を与えたら、よく排便するようになった。でも有形便から下痢便になったというので、食前服用から食後服用にかえたらちょうどよい便になった。でもこれで全て解決したかと云うとそうでもなくて、前に飲んだ当帰芍薬散の方が気分が良いと。朝起きたとき身体がシャキッとして、肩こりも取れたそうだ。

 月経中でないときも腹痛があるというので、腸管の痙攣があって過敏性腸症候群(?)でもあるのかと考えて、当帰建中湯(とうきけんちゅうとう)を服用してもらったら、腹痛の方は月経中にときたま少しあるだけで具合がよいが、また以前と同じく頭痛と肩こりが出て来た。

 つまるところ全身の冷えがあって、腹診(漢方の診断法で、お腹に触って体質・証を診る仕方)で右下腹部痛と左臍傍に圧痛(?血の証)があるので、桂枝(けいし)茯苓丸(ぶくりょうがん)を投与したら、そのあとは来院しなくなった。

 これまでのところを総合すると、当帰芍薬散はとてもよいが、便秘が残る。桃核承気湯で便秘はよいが、当帰芍薬散の方が気分がよい。最後の、?血を治す桂枝茯苓丸で体調が良くなったのかどうか、結果を知りたかった。
(大館市 平成26年1月17日掲載)
印刷に関するご案内
ご案内
広告に関するお問い合わせ
お問い合わせ
後援のお申し込み
資料請求
記事・写真等2次使用について
資料請求
株式会社 北鹿新聞社

〒017-0895
秋田県大館市字長倉79
TEL.0186-49-1255(総務課)
FAX.0186-43-3065(総務課)
 
*日刊新聞発行および一般印刷*
TOPへ戻る