毎週金曜日本紙掲載・協力:大館市北秋田郡医師会

「心のセーフティネット」
という事業をご存じですか?
さとう心療内科 佐藤 泰治

 秋田県の自殺率が10年連続で全国1位という残念な結果になっていることをご存じの方も多いと思います。自殺は突然起こるものではなく自分で悩みを抱え込んでしまい、解決できないでいる状況が長く続くことが下地にあると考えられています。
 悩みとしては慢性疾患などの病苦、失業やリストラなどの経済的不安、借金、離婚問題など様々です。これら悩みを誰にも相談できず、あるいは相談しても解決が見出されずに一人で抱え込んでいる状態に、他の何かのストレスが加わった際に追い詰められ、自殺を考えるような異常な心理状態に陥ってしまうと考えられています。
 あるいは自殺に至らなくとも、悩みを一人で抱え込んでいる状態は、うつ病などの精神の病の引き金にもなりかねません。自殺やうつ病を防ぐにはこの長く悩みを一人で抱えている状態をできるだけ早く解消することが重要だと考えられます。
 例えば、アメリカでは会社では精神的ストレスがかかる重役になるほどカウンセラーや精神科医などのかかりつけ医を持っていると聞きます。自らの精神的健康を維持するため専門的立場からの意見を聞き、時には相談し診察・治療を受けているのです。
 この例のように海外では心の健康に関心が高いと言えそうですが日本はどうでしょうか? 今でも精神科と聞いただけで偏見を持ってしまう人が多いのではないでしょうか。
 自分とは関係無いとか自分は大丈夫だと決めつける人もきっと多いでしょう。できれば精神科とは関わりたくないと思うでしょう。しかし、悩みは誰しも持っているものです。それを長く一人で抱え込み続けるのは精神的疲労をもたらし、上記のような精神疾患や自殺を招きかねません。長い間ストレス社会と言われ続け、自殺者は交通事故の死亡数をはるかに上回り増加し続けています。
 今こそ日本が国、そして県、市町村の地域としてもっと精神の健康に注意を払い、精神の病の予防・治療と自殺の予防に取り組んでいかなければならないのは明白です。この地域の取り組みとして、以前から何とか自殺に歯止めをかけようと色々な試みがなされ、現在も各方面で色々な取り組みが続いています。その一つに昨年から大館・鹿角地域を対象に「心のセーフティネット」と称した事業が進められていることは、余り知られていないかもしれません。
 「心のセーフティネット」は、いわば心が危機に直面した時の自殺など大事に至らないための防御策とでもいう意味で捉えて頂きたいと思います。この事業のメンバーは民生委員、社会福祉協議会、保健センター、労働基準監督署、市民活動サポートセンター、警察、弁護士、医師など悩みの相談を受ける機会の多い分野の人たちで成り立っています。
 この組織は「一人で悩まず、まず相談を」をモットーに地域で何ができるかを色々な分野の人たちが集まって話し合ってきました。これまで自殺の原因の4割近くを占めると言われる「うつ病」に関しての講演を行ったり、色々な相談を各機関で相談できるように相談機関の名称と電話番号を付けたレリーフを全戸に配布したり致しました。
 今回は、「うつ病」に限らずどんな悩みに関しても一人で抱え込まずに相談できる機関があるということや実際にどんな悩みやストレスの対処法などがあるかを幅広く知ってもらうために11月26日土曜日午後1時より3時40分まで大館中央公民館で講演を開くことになりました。
 また、講演直前に予約をして頂いた方に講演後各分野で相談も承っています。一般の方にも気軽に聴講頂けるような内容となっておりますので、多くの方が聴講されることを期待しております。そして今後の心の健康を維持することにお役に立てられればと思います。
      (大館市)
〈協力・大館市北秋田郡医師会http://www.daihoku−med.jp/〉
 (平成17年11月18日掲載)

インデックスお茶の間クリニック トップへ