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性感染症と幸せな人生との関係
大館市立総合病院産婦人科 湯澤 映
「若いうちは、多少の羽目を外しても…」と、往々にして自分の行動に責任を感じない青少年たち。しかし結局は、確実に自分の「将来」にはね返ってくることがらが少なくないと思います。同じことは、健康面でも当てはまります。それは、このところ社会問題のひとつにも数えられる性感染症(STD)−旧来の「性病」−の若い世代における蔓(まん)延です。近年もっとも警戒される性感染症であるエイズ(後天性免疫不全症候群)は、教育現場その他で人間の幸福を考える題材としても取り上げられており、考える機会も多いと思いますが、その他の性感染症については社会的にはあまり注目されておりません。
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ところがこのところ、性感染症を心配して受診する10代・20代、あるいは結婚前後の女性が急増中なのです。秋田県でも、一般の性感染症の頻度が残念ながら全国レベルに達しているとの調査結果がありますが、それが実感させられる毎日なのです。風俗業や大歓楽街をもつ都会だけの話ではもうないのですね。とくに受診者の3割を超すともいわれる10代女性のクラミジア感染症(最初に汚い帯下がふえ、やがて腹膜炎に進展する)は爆発的に増えていますし、尖圭コンジローマ(外陰部に細かくて痛がゆいイボイボができる)、そして性器ヘルペス症(外陰部に非常に痛い水泡ができる)などの性感染症の頻度も、驚くほど高くなっています。昔から忌まわしい存在である淋病も、男性を中心に既婚婦人にも増加中です。
これらの性感染症を考える場合、いくつかの「視点」があります。
すなわち、感染症自体の治療や疫学的な視点がありましょうし、風紀や性教育面からの抑止策も急務です。しかし産婦人科診療に携わる私たちから見てもうひとつとても気になるのは、順調で幸せでありたいとする多くの若い女性の「人生」に、悔やみを残しかねない影響力をもっている点です。それは、妊娠や分娩の能力(妊孕性)への悪影響です。
具体的には第1に、癒着性腹膜炎に進展した女性のクラミジア感染症や淋菌性腹膜炎などは、子宮内膜症などと並んでいまや無視できない不妊原因になっているからです。急性期の治療が十分に行われない場合や、慢性的に経過した場合は危険です。
第2に、めでたく妊娠できても、性感染症や細菌性膣症といった局所の汚染は、子宮口(頚管)に炎症を起こしてこれを緩ませ、胎児を包んで外界から隔てている薄い膜(羊膜)をボロボロにしてやがて破水につながり、ほぼ間違いなく早産となってしまいます。生まれてくる未熟児にはさらに病原体が移行する危険が重なります。
そして第3は出産時。成熟児でも母体の病原体に感染した場合、重症感染症に陥る危険があります。とくに性器ヘルペス症は、体力の乏しい赤ちゃんにとっては生命の危険をもたらすほどの敗血症をきたす可能性があるのです。
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女性にとって妊娠や出産が幸せの条件とは言い切れませんが、それを当然のように夢見る少女や若い女性にとっては、子どもができにくくなったり、発育も危ぶまれる早産未熟児を生んだり、赤ちゃんを病気にまでしてしまうこれら性感染症は、将来、自らの人生をスポイルし、家族を悲しませる原因にすらなってしまうということを解ってほしいものです。
男性も女性も、不安があれば恥ずかしがらずに早く受診して治療し、パートナーにうつさないようにすることこそ、スマートな考え方といえます。
(平成17年1月28日掲載)
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