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小児の中耳炎シリーズ保存版
その3:中耳炎を放っておくとどうなるか?
山内耳鼻咽喉科 山内博幸
中耳炎を放っておくとどうなるでしょう。耳鼻科で子供が中耳炎だという診断を受けて、その後いろいろな理由で通院ができなくなって、でも今さら行きにくくて。そういう方々、気持ち分かります。僕の歯科通院もそうでしたから。
結論をいえば、今までに中耳炎を繰り返したことのない5歳以上の子供なら、原因になった風邪が一般的な経過で治れば95%以上の確率で中耳炎は治っています。3歳くらいになると確率は下がりますが風邪の経過が問題なければまずは大丈夫です。しかし、こんな賭け事はすべきではありません。
問題は、風邪が治らない子、そんな子は3歳以上なら副鼻腔炎になっている場合が大半で、0〜1歳だと免疫力が不完全で風邪から回復できないうちにまた次の風邪をひいているような子です。そんな子供らの中耳炎が短期間に自然に治癒する可能性はかなり低いです。「痛くないと言うので様子を見ていた」というのはよく聞く台詞ですが、実は痛みのある中耳炎は少なく、痛みはあっても最初の数時間程度です。発熱や機嫌の悪さも参考にはなっても痛み同様に初期症状ですから治ったか否かを判断する決め手にはなりません。
耳の構造から見ると4歳で成人の80%まで成長し10歳で大人と同じ耳になります。乳幼児期に中耳炎が長引くと中耳の発育が遅れます。一度発育が遅れるともう簡単には挽回できません。ということは4歳までに中耳炎を長引かせるともう完全な耳になれないということになります。「完全な耳でない」イコール「難聴になる」ということではありません。今は中耳炎の後遺症として難聴が残ることはまずありません。ではどういう点で不完全なのでしょう。
耳のすぐ後ろにある頭がい骨の中に蜂の巣のような小さな部屋に分かれた多くの空洞があります。これを「乳突蜂巣(にゅうとつほうそう)」といいます。この小さな部屋の集合は鼓膜の裏側にある部屋の「中耳」とつながっています。この空洞が大きいほど中耳の性能がよくなります。中耳の性能とは耳の気圧調節の能力と感染の起こしにくさです。
たとえば空のワインボトルにコルク栓をつけるとしましょう。別にそれほど苦労せずに入ると思います。それでは、そのボトルに口から5cmのところまで水を満たしてからコルク栓をはめようとするとどうでしょう。簡単には入りませんよ。なぜでしょう。それはコルクの下にある空気の量が少ないからです。同じコルク栓を入れても中の空気の圧縮のされかたが違うからです。ボトルの中の空気が中耳、コルク栓が鼓膜を表しています。中耳の空洞が小さい、ということは鼓膜が動きにくい状態になるということです。こういう耳は気圧の変化に弱く、大人になっても中耳炎を起こしやすいのです。まあ、大したことではないと思えばそうかもしれませんけど、飛行機に乗るたびに耳の痛みに苦しみ、子供でもないのに風邪ひくたびに中耳炎を起こして耳鼻科通いというのは不便だと思いませんか。
あと、わずかですが「真珠腫(しんじゅしゅ)性中耳炎」が起こることがあります。中耳炎が長引くと中耳に水の溜まる「滲出(しんしゅつ)性中耳炎」という状態になるのですが、この状態から鼓膜が奥にむかってどんどんへこんでいって、さらにそのへこんだ部分の一部が骨の中に食い込んで洞窟をつくっていきます。洞窟は脳にまで達することがあります。昔は命取りになる中耳炎の一つとして恐れられていた病気です。この中耳炎になると多くは難聴を伴います。こうなるともう一生耳鼻科とつきあわなくてはいけません。全ての中耳炎をきちんと治療することはもちろん重要ですが、特に5歳までの中耳炎は決して放置しない。それを忘れないで下さい。
(平成17年1月21日掲載)
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