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風邪薬を賢く使おう
山内耳鼻咽喉科 山内 博幸
暑い夏が終わって風邪が流行する季節が近付いてきました。
市販の風邪薬は便利ですね。病院で長く待たなくてもいいし、簡単に使えるし、多くの人たちが使っているという安心感もあるでしょう。しかし、実はこの薬は結構くせ者です。上手に使わないと逆に病気を引き起こすことがあることをご存じでしょうか。副作用というよりもむしろ使用する時期を間違えたための「効き過ぎ」の弊害です。そういわれても多分ピンと来ないでしょう。
風邪をひいたときのことを思い出して下さい。のどが痛くなって、熱がでて、鼻水がでて、咳が出てます。でもここで時間を追って考えて下さい。風邪の初期の症状と後半の症状は違います。風邪の初期はのどが痛くなって、熱が出て、水っぽい鼻水と痰(たん)が出ます。後半になると、鼻水と痰が濃くなってきて色がついてきます。
風邪の初期は医学的にはカタル期といいます。最初の3日問くらいをいいます。テレビのコマーシャルなどで有名な風邪薬はこの時期の症状にあわせた薬になっています。主役は消炎鎮痛剤と抗ヒスタミン剤です。消炎鎮痛剤は痛みと発熱をおさえる薬です。抗ヒスタミン剤を知っていますか? 簡単にいうと鼻水と痰の水分を抜く薬です。
カタル期を過ぎてもこの薬を飲み続けるとどうなるでしょう。濃くなった鼻水と痰からさらに水分がとられて煮詰まった状態になり粘液は「流動物」から「固形物」に近い状態になります。その結果どうなるでしょう。気道の粘膜にはたくさんの短い産毛(うぶげ)が生えています。顕微鏡でないと見えないような小さな産毛です。これを「繊毛(せんもう)」といいます。繊毛は動いていて、鼻水や痰を排せつしやすいように口の方向に向かって動かしてくれます。まるで胴上げをしているようにつぎからつぎへと隣の繊毛に渡していきます。風邪のウイルスはこの繊毛をこわしてしまいます。痰がゆるければなんとか生き残った繊毛が頑張って運んで、あとは御主人様が上手に鼻をかんでくれて、咳を上手にして痰を出してくれればなんとか気道はきれいになっていきます。あとは繊毛が回復して風邪は完治です。ここで抗ヒスタミン刻を飲み続けたらどうなるでしょう。鼻水と痰は水気を失って固まって動きません。鼻と痰が切れない状態です。動かなくなった鼻水と痰はどうなるでしょう。淀んだ流れは汚くなります。細菌が繁殖してきます。この状態が肺で起これば「肺炎」です。鼻の奥で起こると「急性副鼻腔炎(急性の蓄膿症のこと)」と「急性中耳炎」になります。もちろん、これだけがこれらの病気の原因のすべてではありませんが、何一ついいことはない状態です。
さらにこの薬には大きな問題があります。効き方の個人差が非常に大きいという点です。効き具合が人によって全く違います。カタル期の長さもウイルスの種類や人によって全然違うということを考えると、本来この薬だけは別に「鼻水、痰が濃くなったら止めてください」と注意書きを添えて使うべきものです。
耳鼻科診療をしていると副鼻腔炎や中耳炎の原因が抗ヒスタミン剤の時期を外れた使い方にあると考えられる例が結構あります。医療機関から風邪薬をもらっているときでも鼻水や痰が異常に濃くなってきた場合は抗ヒスタミン剤が入っている可能性がありますから、再度診察を受けるか、電話で問い合わせてもいいと思います。薬局なら薬剤師に症状を詳しく伝えて適切な感冒薬に替えてもらうべきでしょう。
最後に、認識していただきたいのは「風邪薬」は「風邪を治す薬」ではないという点です。「風邪の症状の苦痛を和らげる薬」です。上手に使いましょう。
(平成16年9月24日掲載)
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