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健康診断てなに?
高橋彰彦内科医院
高橋彰彦(大館市)
もちろん皆さんは健康診断というものをご存知ですよね。新生児健康診断に始まって、毎年の学校健診や大学受験に添える健康診断書、職場の従業員定期健診のような簡単なものから市町村単位の基本健診、日帰りドック健診から二泊三日の精密ドック健診等々、実にいろいろな健康診断が行われています。それに、各種のがん検診も種目別健康診断と考えられますから、まさにゆりかごから墓場まで健康診断の連続といっても過言ではありません。しかし、健康診断とは何ぞやということになると、必ずしもちゃんと理解されているとは言えません。
最近の医学雑誌に次のような記事がのっていました。「健康診断で異常なしの判定をもらったのに、三カ月後に末期がんが発見され、結局は死亡してしまった。これは健康診断担当医の誤診によるものであるとして慰謝料請求の訴えが起こされた。しかし、健康診断は医療行為ではないし、またすべての検査を全部行っているわけでもないから、見逃しの責任を問う根拠はないとして却下された」あいにく、それ以上のくわしい内容は書かれていなかったのですが、健康診断は医療そのものではなく、医療を後方支援する立場にあることを示した象徴的な一件だと、私は考えています。当節ホットな話題のハイジャック防止のための身体検査にたとえてみれば、衣服のポケットを上から触ってみて、「鶏卵大の硬いものが右ポケットに入っています」と、基準に従って機械的に通知書を発行するのが健康診断の役目、その通知書に従って右ポケットの中身を全部取り出して確認するのが医師の役目。それが茹玉子だったりミカンだったりしたら「おいしそうですね」とお返しすることになりますが、もしプラスチック爆弾を発見したら、「コラ待て」と直ちに押収して処分しなければなりません。つまり、健康診断としては、「通知」は出すが「病名」はつけないのが基本なのです。
「先生、いっぱい病気が見付かってしまって…」。高血圧症でずーっと通院しているKさんが、やや当惑気味の表情で健康診断の結果表を取り出しました。「血圧が一五〇−九〇で少し高い。心電図は経過観察。尿に糖が出ているから糖尿病の精密検査をしなさい。総コレステロール二三五mg/dlは少し高いので、食事療法の勉強においでくださいと書いてありますよ」「なるほどね。でもこれらの検査結果は、以前からのKさんの検査と特に違ったところはないので大丈夫ですよ」「アレ、じゃあ私が心配性だと思って今まで隠していたんですか?」「いやいや、Kさんが自宅で測っている家庭血圧は、今では一三〇から一六〇ぐらいの間に落ち着いていますし、昔もっと高かった時の影響で心臓が少し大きいのは当然のことなのです。別に心臓が故障しているわけではありません。それから、カルテの表紙に腎性糖尿と書いてある理由は前にもお話ししましたよね。全然糖尿病ではないのに尿に糖を出してくるイタズラ腎臓が結構多いのです。これからも健康診断で同じことを言われるでしょうが、私のところで定期的に確かめていますから大丈夫ですよ」「こりゃまた紛らわしい限りですなあ」「それはそうですね。でもドック健診には高血圧とは関係のない種類の検査もいろいろ入っているので、大いに参考になることも確かなのです。ですから、結果が送られてきたら、すぐにかかりつけの医師に見せて説明を聞いた方が良いのですよ」「なるほど、診断は先生にというわけですな」「もうひとつ、検査数値を基準値とくらべるわけですが、正常値とは書かれていないことにご注意を。正常でなければ異常、異常ならば病気と早合点されてしまうと困るので、基準値という言い方をしているのです。総コレステロールの基準値は、間もなく二四〇mg/dlになるそうですから、あまりこまかい心配をしないようにね」「つまり、検査はドック、診断は先生ということですな」「そういうこと。私はよろず相談病院の院長なのですよ」
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